「跡継ぎができないから」――そんな前近代的で理不尽な理由から、12年間の結婚生活に終止符を打たざるを得なかった佐藤千夏さん。42歳で宮城から身寄りのない東京へ単身上京し、一人暮らしが始まる。異業種交流会や勉強会でつながった人の縁を頼りに、PR業の傍ら、モデル業で糊口(ここう)をしのぐ。そんな中、俳優の今井雅之さん、演出家の奈良橋陽子さんと出会い、持ち前のコミュニケーション力を発揮して新境地を開く。そして、新たな伴侶との運命の出会いが待っていた…。

(上)40歳で離婚を突きつけられ、単身上京。手探りの再出発
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40歳で離婚を突きつけられ、単身上京。手探りの再出発


 佐藤千夏さんは、42歳で単身上京した。通販番組や商品カタログでモデルをして生活費を稼ぎながら、PRの仕事を模索する。新たな人脈を作るために、知り合いの勉強会の運営スタッフに加えてもらい、忙しい日々を送っていた。

 そしてある日、勉強会の講師として呼ばれたのが、俳優の故・今井雅之さんだった。その出会いによって、新たな道が開けていく。

 「今井さんは自衛隊出身で、ザ・体育会系の兄貴肌。面倒見がとてもいい方で、若手の劇団員に飲み食いさせながら、心の訓練もされていました。その一人に、私も加えていただいた感じで。『今度、みんなで花見をするから来い』『新しい舞台の公演があるから来い』などと、何かと声をかけてもらいました。

写真左から佐藤千夏さん、演出家の奈良橋陽子さん、俳優の故・今井雅之さん。今井さんとの出会いが佐藤さんの人生を好転させていく(写真提供/佐藤さん)
写真左から佐藤千夏さん、演出家の奈良橋陽子さん、俳優の故・今井雅之さん。今井さんとの出会いが佐藤さんの人生を好転させていく(写真提供/佐藤さん)

「おまえは今日から劇団のPR担当だ!」

 そのお礼を少しでもしたくて、私は次の公演情報をFacebookにアップして、観劇を呼びかけたところ、50人ぐらい集まったんです。そうしたら、今井さんが『すごい集客力だなぁ』と喜んでくださり、いきなり『よし、おまえは今日からうちの劇団のPR担当だ!』と。それで、何がなんだか分からないままに、PRを任されるようになったんです」