8畳の部屋が自分の城……そして運命的な出会い

 42歳で上京し、世田谷区等々力にある8畳の小さな部屋を借りた。若い会社員が多く住むマンション。室内には冷蔵庫と布団、パソコンデスクのみという質素な暮らしぶりだったが、「ここが自分の城」という実感が持てた。「誰に遠慮することなく思い切り羽根を伸ばせて、本来の、好奇心が旺盛な自分に再会できた気がした」という。

 すぐにPRの仕事にありつけたわけではない。そこで、手伝っていた作家の紹介で、ミセスやシニア世代が中心のモデル事務所に登録した。おりしも40代の「美魔女」や「美熟女」が注目され始めたころで、通販番組や商品カタログでモデルのニーズがあり、生活に困らない収入を得ることができた。

 「あくまでも素人モデルの域は出ませんでしたが、高校生のころになりたかったモデルの夢がかなったようでうれしかったです。PRの仕事を頑張ろう、というモチベーションアップにもつながりました。知り合いの勉強会の運営スタッフになって、新たな人脈づくりにも励みました」

 その勉強会に、俳優の故・今井雅之さんが講演に来た。佐藤さんが上京した翌月のことで、講演後、今井さんが呼びかけてスタッフ全員で飲みに行くことに。そこで今井さんから聞かれるままに東京に出てくるまでの半生について話したら、「お前はなんて、かわいそうヤツなんだ!」と言われてしまった。でもすぐに「過去の出来事はすべて、これから東京で活躍するために起きたんだと思う。お前は絶対伸びるヤツだから」と励ましてくれたという。この出会いが、佐藤さんの運命を大きく変えることになった。

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取材・文/茅島奈緒深 写真/吉澤咲子