ニュース番組や情報番組で活躍した元NHKアナウンサーの内藤裕子さん。40歳で人生の後半の仕事を見つめ直し、NHKを退職。その後、選んだのは「カレー一直線」だった。後編では、NHKを辞めるきっかけとなった出来事や、ライフワークとなったカレーとの出合いについて聞いた。

(上)初代「あさイチ」リポーター 放送直前に迎えた母の死
(下)事故で変わった人生観 40歳でNHKを辞めカレー道へ ←今回はココ

巻き込まれたバイク事故

 母親が61歳で亡くなったため、祖母の世話を引き受けていた父親をケアしたいと思いながらも、仕事に追われ、忙しい日々を送っていた内藤さん。2013年、事故に巻き込まれた。

 交差点で信号待ちをしていた内藤さんの前で、直進してきたバイクが右折車と衝突。内藤さんも事故の巻き添えになった。バイクの車体は、目の前の車止めのポールに当たって跳ね返された。「私も足を打撲しましたが、ポールがなければバイクが直接当たって全身大やけどか即死だった、と警察の実況見分で言われました。

 そのとき、いつ人生は終わるか分からないんだなと本当に実感しました。突然、目の前で幕が下ろされることもあると考えたら、今を大事に生きなくてはと思うようになったんです」。笑っても泣いても人生は一度きり。事故をきっかけに、この先の人生をどう生きるか、真剣に考えるようになった。

1976年生まれ。東京女子大学卒業後、99年にアナウンサーとしてNHKに入局。「あさイチ」のリポーター、「NHKニュース7」「首都圏ネットワーク」などNHKアナウンサーとして18年間勤める。また、ナレーターとして、朝の連続テレビ小説や、大河ドラマ「篤姫」紀行、NHKスペシャルなども担当。2017年退局、18年3月カレー大学院卒業。レトルトカレーのプロデュース、レシピ考案などでも活躍。著書に『内藤裕子のカレー一直線!!』(池田書店)
1976年生まれ。東京女子大学卒業後、99年にアナウンサーとしてNHKに入局。「あさイチ」のリポーター、「NHKニュース7」「首都圏ネットワーク」などNHKアナウンサーとして18年間勤める。また、ナレーターとして、朝の連続テレビ小説や、大河ドラマ「篤姫」紀行、NHKスペシャルなども担当。2017年退局、18年3月カレー大学院卒業。レトルトカレーのプロデュース、レシピ考案などでも活躍。著書に『内藤裕子のカレー一直線!!』(池田書店)

一旦、リセットして考える時間が欲しかった

 10年後の自分はどうありたいか。父のこともあって東京を離れたくなかったが、NHKにいる限り地方局への転勤はある。一度はラジオセンター勤務を志望し、制作に回ることも考えたが、自分のキャリアをうまく描けなかった。「1人でもんもんと悩んでいたんです。上司とは何度も面談をして、休職して考えることも勧めてもらいましたが、中途半端なのが嫌だった」。悩んだ末、好きだったNHKを40歳で退局する道を選んだ。

 「辞めてから考えるのは無謀だと言われましたが、一旦リセットして考える時間が欲しかった。特急から鈍行に乗り換えて、違う景色を見てみたいと思ったんです。人生80年としたら、40歳はちょうど半分。あそこで人生が終わっていたかもと思ったら、今はおまけの人生。家族を大事にしながら、いろいろなことに挑戦して新しい世界を見ていくのもいいかなと。何をすると決めず、退職して家族への恩返しのつもりで主婦業を真面目にやりました」