NHKの情報番組「あさイチ」で初代リポーターを務めた人気アナウンサーの内藤裕子さん。ニュース番組やナレーションなどでも活躍する中、40歳でNHKを退職。第2の人生を「カレー大学院」でスタートした。あふれるカレー愛を発信し、料理番組出演やカレー本の出版、カレー製品のプロデュースなど、活躍の場を広げている。順調だったNHKでのキャリアを中断し、カレー一直線に突き進んだ内藤さんの人生を聞いた。

(上)初代「あさイチ」リポーター 放送直前に迎えた母の死 ←今回はココ
(下)事故で変わった人生観 40歳でNHKを辞めカレー道へ

先輩アナ・有働さんに学んだ「放送人としての覚悟」

 内藤さんが「あさイチ」の初代リポーターになったのは33歳のとき。さまざまな現場を取材してスタジオに投げかける役回りだった。2010年に始まった「あさイチ」はスタッフにも女性を多く集め、40代主婦のリアルな声をすくい上げる新しい生活情報番組を目指していた。「当時、司会を務めていた先輩アナの有働由美子さんからは、 “何が起きても大丈夫”というような放送人としての覚悟を教えてもらいました。生放送の海を渡る船をみんなで一緒にこいでいたんだと思います。

 放送中は何があるか分からないから、番組の流れを大事にしながら、予定調和にならないようにギリギリを攻めていました。そのせめぎ合いが面白かった。有働さんは起きたことは何でも受け止めてくれる。視聴者からファクスやメールで当日の感想などを受け、それを毎日スタジオで紹介する。ラジオの井戸端会議みたいな雰囲気を大事にしていました」

 セックスレスや更年期といった、今まで朝の情報番組ではあまり扱わなかったテーマにも真摯に向き合った。

内藤裕子
内藤裕子
ないとう・ゆうこ/1976年生まれ。東京女子大学卒業後、99年にアナウンサーとしてNHKに入局。「あさイチ」のリポーター、「NHKニュース7」「首都圏ネットワーク」などNHKアナウンサーとして18年間勤める。また、ナレーターとして、大河ドラマ「篤姫」紀行、NHKスペシャルなども担当。2017年退局、18年3月カレー大学院卒業。レトルトカレーのプロデュース、レシピ考案などでも活躍。著書に『内藤裕子のカレー一直線!!』(池田書店)

 「30代はアナウンサーの仕事が本当に楽しい時期でした。そこは民放との違いかもしれませんが、20代は地方に勤務して実践を積みながらアナウンス技術を学び、30代はいろいろなステージに立たせてもらえた。取材をする上で、経験を積んだからこそ寄り添って聞くことができたこともあるように思います」

 内藤さんがアナウンサーを志望したのは大学3年生の頃。NHKの美術インタビュー番組「土曜美の朝」を見て、ベテランアナウンサー山根基世さんの巧みな話術に魅了されたのがきっかけ。「母が専業主婦だったので、一番身近に感じた働く女性がテレビで見るNHKのアナウンサーでした。緊張感のある場面でキレのいい質問をする山根アナに憧れた」。アナウンスの技術など専門的な勉強をする時間はなかったが1999年、難関をくぐり抜けNHKにアナウンサーとして採用された。

 アナウンサーとしての初任地・熊本では失敗の連続だった。