発行部数42万部を超えた大ヒット本『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(日経BP/共訳)をはじめ、次々とビッグタイトルの翻訳を手掛ける、売れっ子の翻訳家・関美和さん(54歳)。20~30代で外資系金融業界で投資顧問会社の東京支店長などを務めるなど順風満帆なキャリアを築いてきたが、45歳で離婚、人生のどん底を味わった。本格的に翻訳家として活動を始めたのはわずか10年前。常に挑戦をし続け、「無計画な人生を歩んできた」と話す関さんの、冒険心あふれるanother STAGEの歩み方とは。

前編
■人気翻訳家・関美和 人生の転機は45歳のどん底離婚

離婚を機に、「まさか」法学部入学

 華々しいキャリアを築き、「しばしの充電期間」として翻訳の仕事を少しずつ始めていた最中、45歳で突然、離婚を経験することになった関さん。安定した仕事もなく、無職のシングルマザーになり、離婚を通して気が付いたことがあった。

 「シングルマザーの貧困は他人事ではないと思いました。私はたまたま養育費がもらえ、仕事が少しずつ得られたけど、紙一重だった。それに、弁護士を活用することの難しさにも気付きました。弁護士と一般の私たちとでは知識格差が大き過ぎるため、依頼人(クライアント)にとってどの選択がいいのか分かりづらいんです。クライアントのUX(ユーザーエクスペリエンス)が考えられていない部分もあり、私自身の経験を生かせば、そこにチャンスがあるのではないかと思って」

 そこで、関さんはまさかの行動に出る。なんと、法学部を受験した。当時、45歳。「今後、稼げるあてもないのに、大学に戻ろうだなんて、無計画すぎますよね。ただ、私は昔から、やってみたいと思ったらすぐ行動してしまうタイプで、『無計画』『無謀』とよく言われていましたし、自分でも本当にそう思うのですが、止められなかった……。あわよくば弁護士資格も取って、誰かの助けになれるんじゃないか、なんて思ったりもして。でも、私のスキルセットでは無理でした。今、あの頃の自分に声をかけるなら、『自分のスキルセットに合った方向を目指せ』『ムダな金を使うな』『法学部じゃなくて、専門で博士号を目指せ』など、言ってやりたいことがいっぱいあります(笑)」

「私は、本当に、昔から無計画でした…」
「私は、本当に、昔から無計画でした…」