離婚後、仕事と子育てをしながら36歳で司法書士試験に合格した太田垣章子さん。一流野球選手に学んだ苦境を脱するメンタルと方法論が土台になった。シングルマザーとして自身が受けてきた支援を社会に還元することが次の目標だという。

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 5度目の挑戦で晴れて試験に合格し、太田垣さんは大阪の司法書士事務所に就職した。飛び込み営業に歩くうちに、家賃滞納の悩みを抱える企業に出合った。当時は法律の改正で、認定司法書士が140万円までの民事訴訟の代理業務ができるようになったばかり。顧客にとっては、弁護士に依頼するより費用や時間を節減できる。

 賃貸トラブルの法的解決を行う司法書士はほとんどいない。太田垣さんも経験はもちろんなかったが猛勉強し、案件を解決に導いたことから次々に仕事を依頼され、「賃貸トラブルの専門家」というキャリアのスタートになった。売り上げを伸ばし、わずか4年後には40歳で独立する。

 「当時の事務所の代表に強く勧められたのが独立のきっかけです。自分としては子どももいるし、経営なんかやっていけないと思っていました。最終的には『駄目だったら戻ってきてもいい』という言質を取って、自分の事務所を立ち上げました」

 結果的に、独立は大きな転機になったという。案件が増えるにつれて、賃貸トラブルについて講演を依頼されることが多くなった。さらに東京での講演依頼が増え、「東京の案件もお願いしたい」と要望を受けるようになったことから、2011年には東京に事務所を開設した。

 組織を離れて独立すると、良いことも悪いこともすべて自分自身に跳ね返ってくる。厳しく評価もされるが、努力の方向が間違っていなければいつかは花が咲く。そう話す太田垣さんが「考え方の土台になっている」というのが、プロ野球の球団広報を務めた時代に間近で見た一流選手たちの姿だという。

「努力の方向性が正しいこと、理にかなっていること。一流選手のメンタルに学んだものは大きかった」
「努力の方向性が正しいこと、理にかなっていること。一流選手のメンタルに学んだものは大きかった」