家賃滞納など、賃貸トラブルの法的解決を多数手掛けてきた、司法書士の太田垣章子(おおたがき・あやこ)さん。家主側の法的代理人だけでなく、シングルマザーや高齢者の住居探しの支援にまで奔走する。難局を乗り越えた経験が次の難局での支えになる。問題解決の突破口は必ずあるという信念で独自のキャリアを切り開いた。

(上)0歳の息子を抱えて離婚。孤立と睡眠3時間の6年間 ←今回はココ
(下)理にかなった努力の大切さ シングルマザーに寄り添う

 不動産の登記や相続など、身近な場面で活動する法律の専門家、司法書士。中でも認定司法書士は、140万円を超えない民事訴訟手続きの代理も行う。章(あや)司法書士事務所の代表、太田垣章子さん(55歳)は家主側の法的代理人として、これまでに2300件以上の家賃滞納の訴訟手続や立ち退き交渉などを解決してきた。

 新型コロナ・ショックの影響で、賃貸トラブルの相談件数は増えている。「私は経済評論家ではありませんけれども、この先コロナが終息しても世界は元と同じには戻らず、すべての業種で二極化が進んでいくと思います」と太田垣さんは言う。その中で残っていけるのは、固定観念に縛られずに変われる企業、変われる個人だとも。

 太田垣さん自身が、次々に襲う環境の激変を乗り越えてきた。シングルマザーとして苦しい時期を過ごした経験から、住居を借りられないシングルマザーや高齢者のために奔走したり、家賃を滞納した若者の実家に一緒に行き、援助をお願いしたりしたこともあるという。

 「困難なことがあっても、必ず扉は開くと思っているんです。それはやはりこれまでの仕事から得たことが支えてくれていると思いますね」

章司法書士事務所の太田垣章子さん。東京に事務所を移して9年が過ぎた
章司法書士事務所の太田垣章子さん。東京に事務所を移して9年が過ぎた