一度は離れた医薬品開発の仕事に復帰した櫻木友紀さん。国内企業、外資系企業、国の機関と医薬に関わるさまざまな組織でキャリアを重ねていく。櫻木さんが仕事を選ぶのには自分なりのルールがあった。子どもの頃過ごした米国での教育から学んだそのルールが、彼女のキャリアを運命的な出会いに誘っていく。

(上)子どもの頃からの夢をかなえて入社6年目で燃え尽き
(下)医薬品開発→キャリコン 経験を生かせる独立の道へ ←今回はココ

 派遣会社からの紹介で、ファイザーで開発担当者の補佐として働き始めた櫻木さん。自社の製品開発をしたいとの思いが出てきて、社員になりたいと自ら希望を伝え、準社員を経て正社員になった。医薬品のグローバル開発や深夜の海外との電話会議など、文字通り24時間働く勢いの仕事だが、楽しかった。

 「その頃小学校に上がったばかりの子どもが、環境の変化に対応するのが大変で不安定になっていました。会社も理解があり、保育園の頃から通っていた剣道の道場で、私の状況も息子のことも分かっていてくれる人がいたことが大きな支えになっていたように思います。

 ファイザーにはファミリーデーがあり、その日は家族を連れて出社できるので、毎年息子を隣に座らせて仕事をしていました。同僚にも息子の状況を知ってもらえるし、息子にとっては私がどんな環境で働いているかが分かるので、急な残業も息子に理解してもらいやすくなりました

櫻木友紀さん キャリアコンサルタント、組織開発&エグゼクティブ コーチ
櫻木友紀さん キャリアコンサルタント、組織開発&エグゼクティブ コーチ
1971年生まれ。東京理科大学薬学部製薬学科卒業後、エーザイで欧米向け医薬品開発に従事。ソニー(現ソニーグループ)で派遣社員として国際展示会や国際学会の事務局を経てファイザーに入社、医薬品開発と兼務で人材育成計画のリーダーに任命される。規制当局の国際部門に転職したのち、キャリアコンサルタントの資格を取得、2018年に独立。ICF-ACC認定コーチ

管理職の誘いを断り続けるも、全社プロジェクトのリーダーに

 そのうち、「管理職になりたかったら推薦するがどうする?」と上司から聞かれるようになるが断り続けていた。あるとき上司から「グローバルに通用する人材の育成に興味があったよね。人材育成のイニシアチブが立ち上がるけど、やる?」と聞かれ、軽い気持ちで「やります」と答えたところ、500人以上の部門全体の人材育成3カ年計画のリーダーに任命されていた

 「全社の3カ年計画プロジェクト5つのうちの1つなのですが、残る4つのプロジェクトに入った30人ほどのメンバーは全員部長クラス。私だけ平社員です。その中でリーダーなんてあり得ないと思い、かなり抵抗しました。今思えば、上司の策にはめられたのかも(笑)。

 やってみたら大変でした。薬の開発もしながらの兼務ですし、育成プロジェクトの目標が『全員が成長したと感じられること』と壮大だったので、あらゆる層に対するアプローチが必要で。全ラインマネジャーを集めてオフサイトミーティングを開いたり、若手育成のプログラムをやったりメンター制度を導入したり、いろんなことをやりました」