「残業ができないからダメ」企業は女性を活用できているの?

 その後櫻木さんは妊娠し、出産して間もなく夫が突然倒れて入院することに。「夫の入院中、看護のために8カ月近く子どもを保育園に預けていました。夫が退院すると2カ月ほどの間に仕事を見つけないと保育園を退園しなければならなくなります。夫の急病や3回の手術など大変な状態を乗り越えて一安心と思ったところで、さらに切羽詰まった状況に追い込まれました」

 夫の治療中、医療関係の資料や薬の添付文書を読み込んでいるうちに、やはり薬が好きな自分に気づき、今度は海外の薬を日本に導入したいと思うようになった。当時保育園は延長保育がなかったので18時のお迎えは厳守。夫も仕事に復帰したばかりで不安がある。自分の性格上、残業をOKにすると延々と残業し続けることが想像できたので残業はしないと決めて派遣の仕事を探した。医薬品開発の事務やサポート業務を希望したが残業ができないとダメと断られ続けた。

 「私は午前9時から午後5時までフルコミットで成果を出す自信があるのに、プラス1~2時間の残業ができないだけではねられるのが残念でした。しかも、後々エージェントに聞くと、落とされた企業から『欲しいスキルを持っているのに残業できない点だけがダメだった』と言われていたそうで、子どもがいて残業ができないとこんなにも選択肢が狭まるのかと、女性の就労困難さに驚きました。

 そんな中で、ファイザーだけは『定時で帰ったら後はみんなでカバーするからいいよ』と言ってくれたんです」

 ファイザーでその後のキャリアにも影響を与える大きなプロジェクトのリーダーを任される櫻木さん。続きの記事はこちら。
医薬品開発→キャリコン 経験を生かせる独立の道へ

取材・文/小島潤子(日経xwoman ARIA) 写真提供/櫻木友紀