目標とモチベーションの共有で信頼関係は維持できる

 2016年5月にリリーメドテックを設立。16年にはプロトタイプ機による臨床研究を東大病院など2カ所で実施した。「臨床研究で行ったアンケートでは8割以上が好意的な評価で、マンモグラフィーとの比較では97%が快適という回答を患者さんから得ています」
(注:臨床研究は国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の支援を得て実施)

 19年4月、隆さんは東大を退職してリリーメドテックの取締役CTOに就任した。夫婦で経営を担うことについて、志保さんはこう表現する。

 「起業すると、どちらかというと夫婦の信頼関係を試されることばかり起きますね。それまでの信頼関係が強固であれば、いろいろなことがあっても乗り越えられると思います」

 そのためには、相手を思いやるだけでは十分ではないという。「『自分はこんなに頑張っているのになぜ相手は……』という不平が出てこないとも限りません。何より大事なのはお互いが同じ目標に向かって、同じモチベーションで動いているということ。目標とモチベーションを共有していることを確信できていれば、たとえ相手が、自分の理解できないことをしていたとしても、何か理由があるのだろうと思うことができます」

 社長の志保さんと、開発を率いる隆さんは時間が合わないことも多い。「基本的に私は組織をつくり、資金を集めるのが仕事。一方、夫は開発を進めるのが仕事という分業状態で、互いの忙しいフェーズがずれているので、結構すれ違いです。それでもコミュニケーションは全く問題ないですね」

 忙しい二人が話をするのは夕食のときがほとんど。「ただし業務連絡は仕事の時間内にします。夫婦の間で物事が決まっていくのは社員から見ても良くないので」