人工知能(AI)の応用ソフトウエアを開発するベンチャー、メタデータ常務の松田圭子さん(54歳)。AIプログラマーとしてキャリアをスタートしたが、仕事と結婚の両方で悩みを抱え、唐突に結婚退職。別居、離婚成立後の数年間にシングルマザーの支援団体で働き、AIベンチャーの創業に関わった。離婚に向けて学び直した自己肯定や人間関係の本質は、その後の生き方に大きく影響を与えたという。

(上)元AI技術者、シングル母の支援経てベンチャー役員に ←今回はココ
(下)AI技術者のサードプレイスは月数回のジャズボーカル

 ネット上の大量の「言葉」から一定の傾向を抽出する。がんの転移の有無を病理画像から素早く判定する――。人工知能(AI)の先端技術を応用し、さまざまなシステムに組み込まれるソフトウエアを開発するベンチャー、メタデータ(東京・文京)。常務の松田圭子さんは、自身も技術者として開発に携わっている。

 2005年に創業メンバーとして参加してもうすぐ15年。多様な技術者が関わる環境をマネジメントする仕事は「まさに水が合っていると思います」という。

 松田さんには、ジャズボーカリストという別の顔もある。定期的にジャズバーやライブハウスのステージに立ち、ジャズ歴は30年以上。「音楽はプログラミングとは全く違う脳の部分を使います。何よりも気持ちが上がりますね」

 先端的なITの領域、そして音楽の世界でのびのびと活動しているという松田さんだが、そのキャリアは転機の連続だった。AIプログラマーとしての最初のキャリアを6年で突然中断して結婚。その後、離婚してシングルマザーとなり、フリーランスとしてさまざまな仕事をしながら娘を育てた。新しい扉を次々と開けていけたのは、葛藤を突破するたぐいまれな行動力があったからだ。

メタデータ常務の松田圭子さん。「この年齢になった今が一番、自由だと感じます」
メタデータ常務の松田圭子さん。「この年齢になった今が一番、自由だと感じます」