父と家族の歴史をたどる本を作ったのを機に、50歳で起業した吉田富美子さん。海外にも顧客は広がり、企業からの「創業のルーツを知りたい」という調査依頼も増えました。全国の調査員スタッフと共に、それぞれの家族の歴史を追っています。

(上)家族の歴史を形に残す 研究職が50 歳で起業した新事業
(下)苦難を乗り越えた先祖の物語は今を生きる人の「お守り」 ←今回はココ

 50歳で会社を辞めて起業すると決めてはいたが「当初は海のものとも山のものとも分からない事業。うまくいく保証は何もなかった」という吉田富美子さん。会社を辞める前に起業への「助走期間」が必要だと考えた。

 吉田さんはまず知り合いに頼んで、家族の歴史をまとめる書籍を何冊か、見本として作らせてもらった。起業の基本知識を得るために、区が開催する起業セミナーに参加し、そこでできた人脈でホームページの作成を依頼した。

 見本の数冊ができたとき、既に吉田さんは明確に事業理念を描いていた。単なる家系調査や家系図作成なら他にもある。「家系をたどっていくだけでなく、家族や先祖は何をしたのか、その背景はどうだったのか。先祖の行動はどのように現在につながっているのかを掘り起こして、先祖が後世に伝えたかったかもしれない思いを形にすることが当社の理念だと考えました」。昔を知る人に言い伝えや記憶を聞き、資料を調べ、情報を整理していくと、その一族の核となるようなものが見えてくるという。「それを大事なメッセージとしてご子孫が受け取り、心が動くところまで行けたら成功だと思います」。起業のときの理念は、200件以上の実績ができた今も変わらないという。

 顧客は国内だけでなく、海外にも広がった。ハワイや米国本土の在住者から、日本語は話せないけれど自分のルーツは日本にあるので調べてほしいという依頼もある。

自分で家族のルーツを調べたい人向けに、セミナーや講演も行う吉田富美子さん
自分で家族のルーツを調べたい人向けに、セミナーや講演も行う吉田富美子さん