専業主婦になったことに後悔はない

 夫は仕事で忙しく、掃除や洗濯などの家事はもちろん、家族の食事作り、3人の子どもたちのお弁当作りから、幼稚園やお稽古ごとの送り迎え、勉強のサポートなど、すべてを一人でこなす日々。「生活のすべてが家族中心、子ども中心で回る。18年間、常に『〇〇ちゃんママ』と呼ばれ、自分を主語にして生きてこなかったように思います」。とはいえ、後悔したことはなかった。「自ら望んで決めたことですしね。子育ても大事な仕事、と誇りを持ってやってきました」

 当時の保科さんにとって、仕事をすることとは、「会社で朝から晩まで、男性並みに働くこと」であり、子育てと両立させるのはムリだと思っていた。子育てをしながらビジネス界の第一線で働く4歳上の姉を間近に見ていたことも大きい。「子どもを保育園に預け、毎日走り回る姉の姿を見て、『子ども3人を育てる私にはとてもできない……』って」

「稼ぐこと」を勧める義母に反発心もあった

 今の活動ができているのは、家族の協力あってのこと。環境も非常に恵まれていると保科さんは言う。「ですが、英語教室のアルバイトで稼いだ貯金とへそくりで、約3万円するお茶道具を10セット(計約30万円)を購入し、最初に自分の茶道教室を開いた時の喜びはたとえようもないものでした」と振り返る。

 「義母(男女共同参画社会基本法成立に尽力した社会心理学者、岩男寿美子氏)は、仕事をバリバリ続けてきた女性でした。生前から『社会と接点を持つことが女性の人生を豊かにする。でも収入がなかったら意味がない。少なくてもいいからお金を稼ぐ仕事をしなさい』と私に言い続けていたんです。若い頃は、そんな義母の言葉に少し反発を覚えたこともありました。専業主婦として一生懸命やってきた自負もありましたから。でも今は、そんな義母の思いを理解できる気がします