法律の奥深さに引かれ、大手法律事務所の弁護士となった藤田美樹さん。留学先の米国で、法律分野のデジタル化に衝撃を受けた彼女が、帰国後に直面したのは契約のわずかな不備や法務リソース不足により紛争に巻き込まれる中小企業でした。彼らを救いたいと、法律の知見とAIを組み合わせたリーガルテック業界での起業を志します。リーガルテックで日本の法務を変え、争いのない社会をつくりたい。その決意が生み出したものとは?

(上)中小企業を紛争から守りたい リーガルテックで起業を決意 ←今回はココ
(下)パートナー弁護士の職を捨てて挑んだ起業 奮闘する日々

 フィンテックに代表される、既存の業界に最新のテクノロジーを組み合わせ、新たな価値を提供するサービス・X-Tech(クロステック)。AI(人工知能)を活用し、企業間の契約や裁判に関する事務作業の効率化を図るリーガルテックも、昨今注目が高まっているクロステックの一つだ。

法律が持つ厳密さに美を感じて法律家の道を選ぶ

 国内最大手の法律事務所の弁護士からリーガルテック業界に転じ、契約書のAIレビューサービス事業を展開するリセの設立者が藤田美樹さん(45歳)。彼女はリーガルテック業界ただ一人の女性社長で、4児の母でもある。

リセ 代表取締役社長で弁護士(日本・米国)の藤田美樹さん
リセ 代表取締役社長で弁護士(日本・米国)の藤田美樹さん

 父の転勤先である関西各地で育ち、東京大学に進学した藤田さんが、法律の奥深さに目覚めたのは大学1年生のとき。

 「刑事訴訟法の授業で、『法律は何と緻密に構成されているのだろう』と感動。それまでは将来の道を決めあぐねていましたが、弁護士を目指そうと決意しました」

 大学を卒業後、24歳で司法試験に合格。「国際的な取引を行う日本企業をサポートしたい」と、約500人の弁護士が所属する国内最大手の総合法律事務所に入所した。