米国で進む、法律分野のデジタル化に仰天
翌年、司法試験に合格し、ニューヨーク州の弁護士資格を取得。現地の法律事務所で働き始めた藤田さん。そこで知り、衝撃を受けたのが、法律分野のデジタル化の進展ぶりだった。
「今日ですら裁判所への書類はFAXで送るなど、日本の法的な書類は紙がベース。法廷に持ち込むのも基本的には紙の資料です。
ところが米国では、当時から資料や法律書はすべて電子化されていて、パソコン検索すればすぐ情報が引き出せる上、文献や判例を項目ごとに分類したまとめサイトまであったんです。
日本の弁護士は、あちこちの文献をかたっぱしから読み、必要な情報をかき集める非効率なリサーチに膨大な時間を費やしますが、米国ではわずかな時間で済む。しかもデジタル文書にはリンクが張られ、クリック一つで引用箇所のサイトに飛べてしまう。裁判所に持ち込むのもノートPC一つだけ。『米国はすごい』と感心しましたが、そのときはまさか自分が、後にリーガルテックサービスに携わるようになるとは思いませんでした」
2年間の米国生活を終え、帰国した藤田さんは元の事務所に復職し、紛争を担当するパートナーに昇格した。アソシエイト時代には上司の指導の下、大企業の案件を主に請け負っていたが、パートナーになって間もない頃、中小企業から相談を受ける機会も増えた。そこで気づいたのが、大企業と中小企業との契約書の「明らかな格差」だった。
「訴訟に発展してしまった中小企業の契約書には、『この一文さえ入れておけば紛争を回避できたのに』『もっと楽に戦えたはず』と、読んでいて悔しくなるようなものが多かったんです」