シホ
40歳
広告会社・営業
福岡県出身
独身・一人暮らし

 学生時代は恋愛も楽しかった。しかしなまじ学生時代に同年代の男と同棲をしてしまったがために、結婚への夢は、通販で服を買ったときに間に挟まってるカシャカシャいう紙並みに薄れた。飲み会やパーティーで結婚の話が出るたびに言い訳としてその話をするのだが、たいていの他人は無責任に「男の人もいろんな人と付き合って成長してるから」などと言ってくる。よほど根性のある女が性根から叩きなおしてくれていない限り、そうそう変わらないと思う。いくら男女平等、セクハラ禁止が世間で叫ばれていても、社会の根幹はまだ男が中心で、家事は彼らにとって「手伝う」もの、お酒は女が「お酌するもの」なのだ。少なくとも私の年代、私の生きる業界では。

(C)PIXTA
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 社会の求める女としてこの世を生きるのはちょっとしんどいな、と何度も思ったが、不思議と、体力面以外で仕事をしんどいと思ったことはなかった。もちろん仕事上でも彼らの求める女であることを強いられた。しかしそれもひっくるめて仕事だ、とかなり早い段階で気づけたから、今までほとんどストレスなくやってこられたのだろう。二年前、三十八になりたてのとき、自分のチームを任された。自分のチームを持つことは広告代理店で営業として勤務する人間にとってひとつの目標である。このポジションでの自分と部下の働きで、今後昇進するか飛ばされるかが決まる。必ず昇進コースに進んでやる、とXX神社まで行き願掛けをした半年後、しかし私の決意は揺らいだ。

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