ヨウコ(48歳)
外資系日用品メーカー
長野県出身
既婚・夫と高校一年生の娘と三人暮らし

 意外なことにモンゴルでは、女児のほうが男児よりもアジアの一国としては高等な教育を受けている。結果、都市部では女性の晩婚化が深刻化しているのだそうだ。

「でも私は好きな人がいたから、十八歳で結婚してすぐに子供を産んだの」

 夜の会食のせいろ蒸し屋で、男の人たちが仕事の話をしている傍ら、ボルジギン氏は私とのガールズ(?)トークを求めた。

「親に反対されなかった?」

「勉強と両立できるなら、っていう条件付きで。もちろん大学は卒業したし、今は夫より稼いでる。娘も昔の私より賢いわ。大学はアメリカに行きたいって言ってるから、私が頑張って稼がないといけないの」

 つい数時間前までビジネスマンの顔をしていたボルジギン氏は、今は母親の顔になり、スマホの画面をこちらに向けてくる。白い犬を抱いた、まだ幼さの抜けない少女の写真が表示されていた。



 子供ができた、と上司に伝えたとき、非常にナチュラルに退職手続きの説明をされた。外資系企業といっても当時の日本支社の社長は日本人で、社員もほぼ日本人で、私が就職したのと同じころに頭角を現してきた外資コンサルや証券とは文化がまったく違った。彼らは「アメリカ的であること」をアイデンティティとするが、弊社は競争相手がラ○オンさんや花○さんであるため、日本人の生活に寄り添わなければならない。結果、とっても日本であった。

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