ソ連崩壊後、モンゴルは急成長を遂げた。多くの日本人にとってモンゴルという国は相撲や遊牧民のイメージしかないだろうが、現在のウランバートルには近代的なビルが立ち並び、一部の富裕層はとてつもなく裕福である。一部の遊牧民も太陽光発電でテレビを観ていたりするらしい。そしてまだ成長過程にあるこの国、および周辺地域は、衛生用品、日用品メーカーの弊社にとっては何としても市場を広げたい土地で、アメリカ本社はその拠点に中国ではなく日本を選んだ。

「ミズ・サエキ、あなたは結婚してる?」

 サブマネのゲレルトヤー・ボルジギン氏(ね? 男女どっちか判らないでしょ?)は、社用車の後部座席から、助手席に座る私に尋ねた。

「しています。子供は十六歳。あなたは?」

「私の子供も十六歳」

 聴き間違いでなければ、ボルジギン氏はそう答えた。 

文/宮木あや子