「だって今日休んどったら十連休やけん、そりゃみんな休むっちゃない。おつかれ」
 「シホ、今年帰ったと? どうやったと?」
 「大みそかと年明け三日だけ。とうとう親も親戚一同も結婚という言葉を口にしなくなってしまったわ」
 「腫れ物が破裂してとうとう患部に変わったか。良かったね」
 「良かったんか……? あ、あと、小学校の同級生が一人祖母になっとった」
 「四十歳で孫!? さすが北九州、女の人生のスピード速か!」

 真緒は一度結婚している、しかも配偶者からDV被害を受けたので親も親戚も二度目の結婚をしろとは、言いたそうだが言わないそうだ。

 恋愛や結婚を必要としない人種がいることを、必要とするほうの人種は絶対に認めようとしない、というよりも根本から理解ができないのだろう。真緒も一度は圧力に負けて結婚したが、実はパートナーを必要としない人種だった。今年の正月休みは一人でバリ島に行っていたという。同様に彼らは「仕事が生きがいの女」の存在も信じようとしない。彼らの推奨する「結婚して仕事を辞めて配偶者に養ってもらう」永久就職は、ある一部の女にとっては最終目標かもしれないが、真緒や私にとっては生きがいを取り上げられ、他人と暮らす苦痛に耐えなければならない永久拷問に等しかった。

文/宮木あや子 イラスト/PIXTA