大卒女子第1号として旭化成に入社し、50年以上に渡ってファッション産業の発展や人材育成に尽力してきた尾原蓉子さん。商品企画室長時代には、リーダーとしてチームのメンバーをサポート、鼓舞することを大切にしてきたといいます。尾原さんが考える、女性が目指すべきマネジメントのあり方とは? 日経xwoman総編集長の羽生祥子によるインタビューの最終回です。

(1)困難の乗り越え方を考えることは楽しかった
(2)ライフシフトには働く目的と「資産」が必要
(3)リーダーは「地図よりコンパス」で道を示して ←今回はココ

「私たちは三重苦を抱えている。でも面白い仕事です」

羽生祥子・日経xwoman総編集長(以下、――) 尾原さんは長年、嘱託社員として旭化成でお仕事を続け、商品企画室長も務めました。今回はマネジメントの役割についてのお考えをお聞きしたいです。

尾原蓉子さん(以下、敬称略) まず一般論として、優れた上司であるためには女性男性問わず、人間力が不可欠です。上には敢然と立ち向かい、下には気配りをして理解を示す。信念を持って仕事をすることがとても大事だと思います。

 商品企画室長時代、部下には30代、40代の優秀な女性が6人いましたが、全員が嘱託契約でした。私は採用のときから、「面白い仕事ですが、私たちは三重苦を抱えています。それを理解した上で、本当にここで働きたいか考えてみてください」と伝えていました。男性中心社会の中で女性であること、社員中心の組織の中で嘱託であること、ゼネラリストが主流の中での専門職。でも、だからこそ自由度がある。

 商品企画室は、アパレル分野に関する新しい流行や消費者の潮流をつかんで、それを得意先のメーカーや、その先の小売業にメッセージとして出していきます。海外出張もあるし、最先端のことも勉強して、「こんな新しい動きがあります!」といった情報をみんなでシェアする。当時は外国語を1カ国語、ネーティブレベルで話せることを条件に採用していたので、英語、ドイツ語、フランス語というように、それぞれ身に付けている言語によって情報ルートも得意なことも違うわけです。そういう人たちが集まって、活発な議論や計画ができました。

 マネジャーとしては、一人ひとりを見てサポートすることも大事ですよね。すごくいいものを持っているけれどプレゼンが苦手な人には、資料の作り方や話し方をアドバイスしました。そして誰かが褒めてくれたら、「今年のプレゼンはすごくいいって、○○さんが言っていたわよ」と伝える。厳しくもするけれど、激励をして、自信をつけさせるようにしていました。

「商品企画室長時代、メンバーの女性たちは『三重苦』を抱えていましたが、各自の強みを生かして活発に議論を交わしながら生き生きと仕事をしていました」
「商品企画室長時代、メンバーの女性たちは『三重苦』を抱えていましたが、各自の強みを生かして活発に議論を交わしながら生き生きと仕事をしていました」