大卒女子第1号として旭化成に入社し、50年以上に渡ってファッション産業の発展や人材育成に尽力してきた尾原蓉子さんに、日経xwoman総編集長の羽生祥子がインタビュー。連載第2回は女性のキャリア形成がテーマ。ライフシフトや専門性の高め方など、ARIA世代がこれからの働き方を考えるうえで気になるトピックについてもお話を聞きました。

(1)困難の乗り越え方を考えることは楽しかった
(2)ライフシフトには働く目的と「資産」が必要 ←今回はココ
(3)リーダーは「地図よりコンパス」で道を示して

「働き続けること」を具体的にイメージできているか

羽生祥子・日経xwoman総編集長(以下、――) 尾原さんは旭化成に入社後、ファッション・ビジネスの本場アメリカに留学して自らの専門能力を高めつつ、結婚や出産を経ながらもキャリアを中断することなく働き続けてこられました。早いうちから自分のキャリアプラン、ライフプランを見据えて行動していたそうですね。

尾原蓉子さん(以下、敬称略) それは当然のことです。人生における選択肢は、男性よりも女性のほうが多岐にわたります。結婚、出産や育児、それに配偶者の転勤も、全部自分の仕事に関わってきます。

 結婚しても仕事を続けたい、家庭も持ちたい、子どもはできれば二人くらい欲しいとプランしたら、それができるような仕事を選び、両立できるような能力を身に付けようとしますよね。仕事をしながら勉強することも当然考えられます。でも多くの女性が、仕事を一生、もしくはある程度のところまでやるということについて、具体的なイメージを描いていないんです。

 私は初めての大卒女性として旭化成で仕事を始めましたが、「これはなかなか使えるね」と会社も思ったらしく、次の年から1人か2人ずつ、営業部門の裁量で大卒女子を採用していきました。そのときに私も面接官として呼ばれたのですが、残念なことに大半の学生が、自分の将来について具体的に考えていませんでした。「あなた、結婚はどう考えていますか?」と聞いたら「ちょっと分かりません」って。もちろん、今はこうした質問はできませんが。

 私は結婚しても絶対に仕事をしたいと思っていましたから、それが結婚相手を選ぶ条件でした。大抵の人はいいと言ってくれるのですが、子どもが生まれても仕事を続けたいと言うと、決まって驚いた顔をされたものです。幸い、条件を受け入れてくれた人と結婚することができました。

 プランニングをしていたって実際は想定外のことがいっぱい起こります。だからこそ、できるだけ具体的なイメージを描くこと、そのために必要な情報収集をすることが大切なんです。

「多くの女性が、一生仕事を続けるということについて、具体的なイメージを描けていません」と話す尾原さん(写真右)
「多くの女性が、一生仕事を続けるということについて、具体的なイメージを描けていません」と話す尾原さん(写真右)