難しい交渉でも、全く下手に出なかった訳

尾原 今振り返るとすべてそうなのですが、自分のことでちょっと難しい交渉をするときでも、私はいつも「自分のためにやっているのではない」と思っていたんです。私がこの金額で妥協したら、後に続く女性にとって、いつもこれが前例になってしまう。

 私自身には、何をやるにも前例がありませんでした。そんな私が妥協した結果が既成事実となるのは嫌でした。だから、直接的には自分の交渉事でありながらも、卑下するとか、申し訳なさそうに下手(したて)に出るといったことは全くしないで、「この先いずれ、女性に会社でフルに活躍してもらいたいと思うことがあるかもしれませんよ。そのときに、今の私と同じような気持ちを抱かせたら絶対に良くないです」といった言い方をしました。

 私はアメリカで勉強し、自分の専門性を持って帰ってきた。本格的なファッション・ビジネスの実学です。それがフルに生かされることは会社のためになる。能力に見合う報酬が得られれば、みんな生き生きと仕事をし、それが結果として組織への貢献につながる。口先だけではなく実際にそう思っていました。それでもダメと言われたら、もうこの会社は失礼します、と思っていました。

―― そうなんですか! きっとそういう気概や迫力も、相手に伝わるのでしょうね。

「直接的には自分に関する交渉ごとでも、後に続く女性たちのためという思いがあったから、下手に出ることは全くなかったです」と尾原さん。「卑下しない気概が、男性組織相手の交渉にも効いたのですね」(日経xwoman 羽生祥子総編集長)
「直接的には自分に関する交渉ごとでも、後に続く女性たちのためという思いがあったから、下手に出ることは全くなかったです」と尾原さん。「卑下しない気概が、男性組織相手の交渉にも効いたのですね」(日経xwoman 羽生祥子総編集長)