日々、時間に追われるARIA世代に必要なのは、心の楽園。写真1枚で心が飛んで行ける「至高の楽園」を、写真家・三好和義さんがお届けします。楽園をテーマに40年間写真を撮り続ける三好さんが選んだ10番目の楽園は、人知が及ばない大自然の力を感じさせる屋久島です。

―― 1993年に日本で初めて世界自然遺産に登録された屋久島は、鹿児島最南端の佐多岬から南に70キロメートルに位置しています。九州一の高さを誇る宮之浦岳(標高1936メートル)を擁し、世界有数の雨が多い島(作家・林芙美子が「月のうち、三十五日は雨」と『浮雲』に書いたほど!)ゆえに、植物の宝庫となっています。三好さんがこの島に魅了されるようになったのは、意外なきっかけからでした。

荒野の聖地で見つけた「みずみずしい屋久島」

三好和義さん 僕が屋久島と「出合った」のは、死海のほとりにあるユダヤの聖地・マサダ(イスラエル)でした。荒野の真ん中に立つ岩山へと上るロープウエー乗り場の脇に、どういうわけか、屋久島の写真が何枚か貼られていたのです。カレンダーの切り抜きを切符売り場の女性が大切にとっておいたようでした。

 美しく鮮明に印刷された、濃く力強い緑、したたり落ちる水が、目の前に広がる乾ききった荒野の風景と強烈な対比となりました。そのときの僕にとっては、キンキンに冷えたおいしい飲み物よりも、この写真の方がずっとありがたく思え、「これこそが楽園だ」と叫び出したい気持ちでした。気高く神々しい森の姿。日本にいるときには感じることがなかった「大切なもの」を、はるかイスラエルの地で見つけたように思いました。

 このイスラエルでの体験の数年後、1991年からじっくりと屋久島を撮り始めました。

「屋久島に来ると、手つかずの原始の姿を残した自然こそが芸術品であると感じます。ヤクスギランドで朝の光を捉えました」
「屋久島に来ると、手つかずの原始の姿を残した自然こそが芸術品であると感じます。ヤクスギランドで朝の光を捉えました」
豊臣秀吉の時代に伐採されたと伝わる「ウィルソン株」は周囲13.8メートルの巨大な切り株。「10畳ほどもある中から見上げると、空がハート形に切り取られたように見えます」。縄文杉に向かう途中にあり、観光客に人気の撮影スポット
豊臣秀吉の時代に伐採されたと伝わる「ウィルソン株」は周囲13.8メートルの巨大な切り株。「10畳ほどもある中から見上げると、空がハート形に切り取られたように見えます」。縄文杉に向かう途中にあり、観光客に人気の撮影スポット
「ヤクシマザルの赤ちゃんとバッチリ目が合いました。ヤクシカには、島のいたるところで出合えます」。ヤクシカは本州などに住むホンドジカの亜種で、2回りほど小さい
「ヤクシマザルの赤ちゃんとバッチリ目が合いました。ヤクシカには、島のいたるところで出合えます」。ヤクシカは本州などに住むホンドジカの亜種で、2回りほど小さい
「ヤクシマザルの赤ちゃんとバッチリ目が合いました。ヤクシカには、島のいたるところで出合えます」。ヤクシカは本州などに住むホンドジカの亜種で、2回りほど小さい