この連載では、キャリアを積み上げてきたARIA読者にとっても「あの人はどんなやり方で成果を出しているんだろう?」と気になりそうな方から、仕事でうまくいくコツや、失敗から学んだことを聞き出します。今回登場するのは作曲家の梶浦由記さん。1993年のデビュー以来、主にアニメのBGM=劇伴の作曲家として長年第一線で活躍しています。全2回のインタビューの(上)では、劇伴の知られざる世界や、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』で求められた役割、さらに作曲家の個性について伺いました。

(上)大ヒットアニメ『鬼滅の刃』 冒頭BGMはこう誕生した ←今回はココ
(下)OLからバンドデビュー 無名の作曲家が築いたキャリア

―― 『鬼滅の刃』や『魔法少女まどか☆マギカ』、『ソードアート・オンライン』シリーズなど、大人気アニメのBGM(劇伴音楽)を手掛ける作曲家の梶浦由記さんは、日本のアニメ界に欠かせない存在です。まず、劇伴の作曲というお仕事について教えてください。

梶浦由記さん(以下、敬称略) 劇伴というのは、アニメーションやドラマ、映画といった映像作品の後ろで流れている音楽のことです。私もこの仕事に就くまでは、音楽が流れていることをあまり意識していませんでした。でも実は、映像作品で音楽が流れていない作品はほとんどありません。最近はニュース番組でも音楽が流れますよね。私は、主にアニメの劇伴を作っています。

作曲家の梶浦由記さんは『鬼滅の刃』や『魔法少女まどか☆マギカ』、『ソードアート・オンライン』シリーズなど、大人気アニメのBGM(劇伴音楽)を手掛ける
作曲家の梶浦由記さんは『鬼滅の刃』や『魔法少女まどか☆マギカ』、『ソードアート・オンライン』シリーズなど、大人気アニメのBGM(劇伴音楽)を手掛ける

―― 普段アニメを見ない人でもNHKの番組『歴史秘話ヒストリア』の音楽を手掛けたのが梶浦さん、と聞いたらピンと来るかもしれませんね。劇伴の曲は、具体的にどのような流れで制作されるのでしょうか。

梶浦 テレビアニメや映画の場合は、公開の数カ月前に原作本やシナリオなどの資料をいただいて、作品の知識を入れたうえで、作品の監督や音響監督と「どんな音楽を作るのか」打ち合わせをすることから始まります。

 打ち合わせでは、音響監督さんから「音楽メニュー」と呼ばれるオーダー表をいただくことが多いですね。そこには、「こういう音楽がほしい」という内容が箇条書きにされているので、一曲一曲の具体的な音楽の方向性を相談しながら決めていきます。打ち合わせでつかんだイメージを持ち帰って、ひとりで作曲し、提出するというのが基本的な流れです。

―― その音楽メニューにはどんなことが書かれているのでしょうか。