PRの種は少しずつでもまき続けることが大切

笹木 経験的に、PRで売り上げを思うようにコントロールできないのは確かです。「これは売れる紹介だったぞ」と手応えを感じても、売れないことがある。メッセージの切り口と受け手側の欲しくなる気持ちとがかみ合わない場合もあります。バーミキュラは、メイドインジャパンや工場工程などのストーリーにフォーカスされ過ぎる傾向があり、実際に使うであろうユーザー目線、例えば「こんなに時短になり簡単でおいしい!」と紹介されないことが多いのが、原因の一つかもしれません。

 それでも、コントロールできないからこそ、PRの種は少しずつでもまき続けるしかない。PRを始めて9カ月後くらいに、ゴールデンの時間帯のテレビ番組で12分間くらいずつ取り上げてもらえることが2週連続であり、いきなり火が付いたように売れ始めました。種をまき続けて少しずつ世に出ていた情報をリサーチ会社が拾って、テレビ局に企画を出したそうです。あっという間に在庫がなくなって、再び1年待ちに。月産50個の発売当初とは違い、月産2000個になってからの1年待ちです。

 入社1年で再び注文殺到となったバーミキュラの好機を逃すまいと、畳みかけるようにプレスリリースを作成しました。「一時最大15カ月待ちのバーミキュラ。生産拡大し2015年納期解消後、さらに人気再加熱。予想を超える注文に現在8カ月待ちの品薄に」と題して、注文殺到の状況をメディア関係者に伝えたところ、それを話題にさらに露出が増えました。リリースには、バーミキュラを愛用する料理家として有元葉子さん、白崎裕子さん、SHIORIさんらを紹介し、採用済みのレストランやホテルの名前も列挙しました。これが「実績」です。

 どんなに有名な商品になっても、「メディアが来るのが当たり前」と考えてはダメ。どんなふうに取り上げてほしいかをイメージして、こちらから仕掛けるのがPRです。最近では、従来の雑誌やテレビといったメディアとは異なるSNSを使ったPRも重要です。SNSのユーザーは、いいと思ったものはすぐ手に入れたい、すぐ購入してくれる、という特徴がありますが、それ故に、彼らにピンポイントで刺さるマーケティングが不可欠になります。

―― 次回は、SNSを使った現在のPR術について詳しく伺います。

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取材・文/堀田恵美 写真/鈴木愛子 構成/大屋奈緒子(日経ARIA編集部)