悶々とするであろう残り40年に身を投じるなんてできない

 イギリス人の夫と25歳で結婚して15年。夫と私が紡ぎ出す2本の糸は、同じ張力で家族という錘(おもり)を一定のバランスで支えてきました。けれども、いつの頃からかそれは不均衡に傾き始め、一方だけに過度な負担がかかるようになってゆきました。長い時間をかけ、調整しようと試みたものの、さっぱり上手くいかず。そこで私たちは苦肉の策というよりも最善策として、若かりし頃に繰り返した恋愛のように“キャッチ&リリース”を試みることにしたのです。自分に合わないと思えばすんなり放流すれば良い。たったそれだけのシンプルな決断が結婚した途端、ましてや子どもができた途端、一気に難しくなってしまいます。そりゃそうだ、結婚と恋愛は別物なのだから。きっと多くの人がそう思うでしょうし、頑なに結婚を固守しようとしていた以前の私も同じ考えでした。しかし、今年で40歳。平均寿命で長生きするとあと40余年、人生のちょうど折り返し地点です。楽しかった40年に終わりを告げ、悶々とするであろう残り40年に身を投じるなんて生き方、私には到底できません。そうだ、40歳を目前に人生の断捨離をしよう! そう、私は決心したのでした。

 放流後、もしかして同じタイミングで帰ってこられるかもしれない。もしくは、そのままバラバラに人生を泳ぎ切るかもしれない。そうよ、二人してならまだしも、周りを巻き込んで溺れ死ぬよりかはずっと良いじゃない。それに恋愛だってしたいもの。結婚相手と恋愛関係で居続けられるのがもちろんベストだけれど、そんな兆しは1ミリもなく。愛情の愛がなくなり、情もなくなり、そこにあるのは無関心、みたいなことだけは避けたいもの。経済的にはキツイけれど、娘たちも合意の上での別居。別名、贅沢婚。