安定も、確かな地位もあるのに、新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。デンマークにある世界最大手の海運会社に勤務した後、得意の英語力を生かし、日英バイリンガルMCとして国際会議などで活躍してきた長森真希さん。ある一言がきっかけで起業を決意し、子ども服のリユース事業を手がけるキャリーオンを設立しました。「私は生きるために起業の道を選んだ」と語る長森さん。その真意と事業が軌道に乗るまでの舞台裏を語ってもらいました。

(上)情熱より生きるために選んだ起業の道 ←今回はココ
(下)低調な創業時、踏ん張り国内トップに

起業するしか、再生の道がないと思っていた

 長森さんが代表取締役COOを務めるキャリーオンは、子ども服のリユース事業を手がける会社。成長するにつれて次々と小さくなり、すぐに着られなくなってしまう子ども服を買い取り・販売するオンラインサービス「キャリーオン」がママたちの間で人気となり、これまでに累計40万件以上も子ども服が取り引きされています。会員数は3万人以上。国内最大規模のリユースサービスへと成長を遂げています。

―― まずは、会社を立ち上げたきっかけについて教えてください。

長森真希さん(以下、敬称略) キャリーオンを共同創業した吉澤(健仁氏)の一言がきっかけです。当時、私はMC(司会者)としてフリーランスで働いていたのですが、この先長く続けられる仕事ではないと思っていたので、いつか自分のビジネスを立ち上げられたらいいなと、漠然と思っていました。ただ、私自身「これがやりたい!」という明確なものがなかったので、依頼された仕事に精いっぱい取り組みながら毎日を過ごしてきたんです。

 そんなとき吉澤から「子ども服のリユース事業を考えているんだけど、どう思う?」と相談を受け、当時2歳の息子の子育て中だった私は、「それはママにとってもありがたい事業だし、ニーズもあると思いますよ」と答えました。そうすると「一緒に事業をやりましょう!」と話が進み、その半年後には会社を設立していたんです。私が38歳の時でした。

―― 小さなお子さんを抱えての起業、不安はなかったですか? ご家族の反応も含めて……。

長森 正直なところをお話しますと、その頃はちょうど離婚をしたいと思っていた時期で「何か自分で始めなきゃ!」という切迫感があったんです。一家の大黒柱として生活を支えるためには収入を得る形も大きく変えないといけないし、特にこれといったキャリアがあるわけではない私は、起業するしか再生する道はないなと。そんなところに新しく事業を立ち上げるという目標をいただいて、ありがたいチャンスだと思いました。

―― そうなんですか。海外で活躍し語学も堪能な長森さんなら、一般企業からも引く手あまただと思うのですが。

キャリーオン代表取締役COOの長森真希さん。「これといったキャリアもない。離婚を決意し、一家の大黒柱として生活を支えるため起業することにしました」
キャリーオン代表取締役COOの長森真希さん。「これといったキャリアもない。離婚を決意し、一家の大黒柱として生活を支えるため起業することにしました」