事業が走り出して「これが私のやるべきこと」と思った

長森 いやぁ、どうでしょう(笑)。実は最初に勤めたデンマークの海運会社を辞めてからは、キャリアというキャリアはないように感じているんです。会社に入るまでは親の敷いたレールを歩いていて、そのまま進めばきれいにキャリアを積み重ねてこられたんでしょうけど、両親が離婚したのをきっかけに私の中で“とらわれ”が一気に外れまして。「私ももう自由に生きてもいいんじゃないか。これからの人生、本当に好きなことをやろう」と思い立ち、会社を辞めて帰国。劇団に入って演劇活動を始めたんです。

 ただ、劇団のカラーと合わなかったようで、所属している6年の間、舞台にほとんど出させてもらえず……。好きで入った世界が自分の道でなかったときのショックは大きく、どん底まで落ちましたね。かといって長らく実務から離れていたので、キャリアウーマンにも戻れない。会社員として復職するという道もあったのかもしれませんが、自分にはもう無理だと、はなからあきらめていました。そのあたりから、自分は独立・起業するしかないと思うようになったのだと感じます。

―― そうだったんですね。そもそも安定の道を選ばないところが、起業家の素質をお持ちなんだろうなと。

長森 確かに。ある意味、チャレンジングな人生ですものね(笑)。ただ、他の起業家の方とちょっと違うのは、「自分がこのビジネスをやらなければ死んでしまう!」というほどの熱い情熱や使命感から始めていないということです。創業当時はそのことにずいぶん悩んだし、引け目にも感じていました。一生懸命、「自分はこういう志を持って始めました!」などと起業家然として、装っていた時期もありますからね。でも、ないものはないんだから、出しようがない(笑)。猫をかぶるのはやめて、そのままでいこうと腹をくくりました。

 私の場合は実際に事業が走り出して、具体的に形になってから、「ああ、これが私のやるべきことなのかも」と後からじわじわ思いが湧いてきました。だから、最初から「大義名分」はなくても、起業していいんじゃないかと思うんです。少なくとも私は生きるために起業をして、後から「大義名分」ができた。起業の名目は「後付けでもいい」と思うのですが、いかがでしょうか。

Q起業の「大義名分」がない場合はどうしたらいいでしょうか。
Q起業の「大義名分」がない場合はどうしたらいいでしょうか。
「私は『自分がこのビジネスをやらなければ死んでしまう』というほどの熱い情熱や使命感から起業したわけではありません。生きるために起業をして、後から『大義名分』ができた。起業の名目は『後付けでもいい』と思います」

―― 子ども服のリユース事業は子育て中のママから大変ニーズがありそうですが、起業して早い段階から軌道に乗りましたか?