安定も、確かな収入もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。「シェアリング」という言葉がまだ知られていなかった2008年、空きスペースを有効活用する「軒先ビジネス」で起業した西浦明子さん。ソニーに勤めていた20代は、チリに駐在していたという経歴の持ち主です。アイデアを事業化し、軌道に乗せるまでの道のりを伺いました。

(上)38歳で出産と同時に起業 パソコンがあればそこが職場 ←今回はココ
(下)「三方良し」のシェアリングで街づくりをサポート

 使っていない「軒先」のような遊休スペースを登録して、借りたい人と貸したい人をマッチングさせるうサービス。「いつかお店を持ちたい」と夢を持つ人の最初の一歩を応援する事業です。会社名もずばり「軒先」。

  ――シェアリングの先駆けともいえるアイデアはどこから生まれたのですか?

西浦明子さん(以下、敬称略) 出産準備で前職を辞めたときです。妊娠中は時間があったので「出産したら何をしようかな」と、考えていました。最初はスペイン語が得意なので自宅で翻訳や通訳をしようとか。駐在していたチリが大好きだったので、個人輸入でチリの雑貨のネットショップを開こうと思ったんです。事業というより、お小遣い稼ぎぐらいの気持ちでした。

輸入雑貨を売ろうと場所を探したら…

西浦 どんな物が売れるか分からないので、まずはどこかでテスト販売したいと思って、店舗を探し始めたんです。ところが、どこの不動産屋に行っても短期で貸すような仕組みがなく、ことごとく断られてしまいました。自由が丘駅前の商店街にウイークリーショップがあったので、問い合わせをしてみたのですが、めちゃくちゃ高くて。2坪程度の店舗で家賃は1週間21万円、しかも半年先までずっと予約がいっぱいでした。

「妊娠中、大きなおなかでウイークリーショップを扱っている不動産屋さんに行ったら、『素人の主婦が何言ってるの?』みたいに、軽くあしらわれてしまって」と話す軒先代表取締役の西浦明子さん
「妊娠中、大きなおなかでウイークリーショップを扱っている不動産屋さんに行ったら、『素人の主婦が何言ってるの?』みたいに、軽くあしらわれてしまって」と話す軒先代表取締役の西浦明子さん

西浦 1日3万円相当の賃料を払うとしたら、最低でも1日10万円くらいは売り上げなくてはいけませんよね。初めてでそこまでのリスクは負えない。でも、敷金・礼金を払って長期で店舗を借りるか、フリーマーケットで出店するみたいな選択肢しかありませんでした。

 1日3万円は無理でも1日3000円くらいなら出せる。「ちょっとした軒先みたいな売り場がないかな……」という目で街中を見てみると、人通りがあって、小物を並べてのぼりが置けるようなスペースって意外とあるんです。それが私の「スキマハンター」としてのキャリアのスタートです。