「子育てが一段落してから」とは思わなかった

西浦 決して皆さんにお勧めはしませんが(笑)。自分で事業を立ち上げるのも初めて、子育ても初めて。どっちも初めてなのに手を付けてしまったのは今思うと無謀でしたね。でも「子育てが一段落してから」と思っていたら多分やっていなかった。

 このアイデアを誰かが始める前に、自分で世の中に出したいという思いが強くなって。「出産ハイ」ではないですけど、テンションが高くなっていたので、その勢いで進めることができました。この事業も、自分の子どもと同じように大事に育ててきたなと思っています。

「子どもの年齢と会社の年齢は同じ。どちらも大切に育ててきました」
「子どもの年齢と会社の年齢は同じ。どちらも大切に育ててきました」

起業という選択肢は女性のライフスタイルに合う

―― 「いつかは起業したい」という思いは昔からおありだったんですか?

西浦 いえいえ。大学卒業時は普通に企業に入って働くものだと思っていました。起業するって大変だなと思っていたので、まさか自分がそちら側にいくとは。でも、実際にやってみると、起業という選択肢は女性にとってすごくいいと思っています。特にIT系のサービスだとパソコン1つでどこでも仕事ができる。

 私はソニーに勤めているとき、20代の大半をチリに駐在していました。だから何か途上国に恩返しをしたいと思って、30代後半、政府開発援助(ODA)を下支えするような外務省の外郭団体に転職したんです。そこでやりがいを感じた矢先の妊娠。

 今なら30代後半の出産も普通ですが、当時は産後の体力も心配でした。きっちりした組織の中で、自分が子育てをしながらキャリアを続けていけるかも不安で。退社しても何らかの形で仕事は続けるだろうと思って一旦組織を外れることにしたんです。

 起業すると、自分で時間管理ができて、周りの人に気を使わなくても子育てと仕事が両立できる。私はすごく楽でした。最初のオフィスは保育園と自宅から10分圏内に構えたんです。だから何があってもすぐ迎えにいける。オフィスの場所も自分で決められるし、最初は自宅にしてもいい。自分に都合がいいんです。

 何より起業してよかったのは月曜日がつらくない(笑)。これは女性に限らずですね。みんなが上場を目指すような企業ばかりではないので、もっと「起業」という選択肢が女性に広がったらいいなと思います。

※近日公開の後編(下)に続きます

取材・文/竹下順子(日経ARIA編集部) 写真/洞澤佐智子

西浦明子
軒先代表取締役 スキマハンター
にしうら・あきこ/1969年生まれ。上智大学外国語学部卒業後、91年ソニー入社。海外営業部に所属後、94年ソニーチリに駐在。2000年、同社を退社後帰国。創業時のオールアバウトで広告営業を経て、01年ソニー・コンピュータエンタテインメント入社。ゲーム機のローカライズ、商品開発などを担当。06年同社を退社後(財)日本国際協力システムで政府開発援助(ODA)関連の仕事に携わる。07年、妊娠を機に退職。08年4月に軒先を創業し、2009年に法人化。ベンチャーフェアJapan2009最優秀賞など数々の賞を受賞。「軒先ビジネス」「軒先パーキング」「軒先シェアレストラン-magari」など、複数のシェアリングサービスを運営。