最初はわずか登録8件でスタート

―― 予想以上にニーズはあったわけですね。それですぐに会社を設立したんですね。

西浦 いえ、最初は個人事業で始めました。「売れるかどうかも分からないのに会社を設立したらそれだけで費用がかかる。まずは個人事業主でやってめどが立ったら法人化すればいい」と夫がアドバイスしてくれたんです。彼は20代で起業して自分で会社を経営していましたから。

 登録する物件数もわずか8件。それも夫と私が交代で近所の商店街を探して集めたもの。手作り感満載でしたね。最初の数年は夫も仕事の合間に手伝ってくれました。

―― なるほど。そこからどうやって事業を軌道に乗せていったのですか?

西浦 いくつかステップがありましたが、「法人化しよう」と思ったのはリーマン・ショックがドンと来たときです。

 当初はスペースを貸してくれるオーナーさんの開拓が本当に大変でした。シェアリングという言葉も全く知られていないときでしたから、「軒先を貸してください」と言ってもなかなか理解してもらえません。二言目には「どこの誰が使うか分からないのに、貸して何かあったらどうするんですか」と言われ、すごく苦労していました。

 それが、リーマン・ショックで不動産の需要が減ったため、オーナーさんたちも「現金収入が入るなら短期でもいいから貸したい」と言ってくれるようになってこれまでお願いしてもなかなか貸してもらえなかった一等地の物件をどんどん登録してもらえるようになったんです。供給量が圧倒的に多くなりました。

 都心の一等地が貸してもらえるようになると、利用者さんもついてくるので、成功事例がたくさん出来る。それを持って、ほかの不動産会社にも営業に行きやすくなったんです。それが最初のターニングポイントでしたね。2009年4月に法人化しました。

―― 子育てと起業の両立はご苦労も多かったのでは?