新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。今回は、東日本大震災をきかっけに、高気密・高断熱の家をつくる「低燃費住宅」(現・WELLNEST HOME)を、創業者の早田宏徳さんととも設立した芝山さゆりさん。41歳からの再スタートでした。新興ハウスメーカーを10年で年商50億円までに成長させた芝山さんのアイデアとは? 起業後の苦労と成長の軌跡を聞きました。

(上)専業主婦から36歳で起業 会社の危機で絆が深まった
(下)新興住宅メーカーが10年で年商50億に成長した理由 ←今回はココ

ハウスメーカーとしてゼロからのスタート

編集部(以下略) 東日本大震災で苦しい状況もあった中でハウスメーカー「低燃費住宅」として再出発。新しい挑戦だったと思いますが、どう営業していきましたか?

芝山さゆりさん(以下、芝山) ハウスメーカーといっても最初はモデルハウスも完成事例の写真もない。設立したばかりで知名度も信用もない。ゼロからのスタートでしたが、「100年暮らせる、環境にいい家を広めたい」という気持ちだけはあふれていましたね。

 住宅説明会や工法のセミナーを開いたり、YouTubeを使ったりして、エアコン1台で暮らせる低燃費住宅であるという技術と、持続可能な社会をつくるため震災後に会社を立ち上げたという理念を説明して回りました。自分たちがつくる住宅の良さには自信がありましたから、その感動を伝えるしかなかった。当時は今ほど地球温暖化への危機感はありませんでしたが、半年後には理念に共感した最初のお客さんに契約していただけました。

「最初の1棟を契約してもらうまでは本当に大変でしたが、優秀な営業マンが頑張ってくれました」と話すウェルネストホーム代表取締役社長の芝山さゆりさん
「最初の1棟を契約してもらうまでは本当に大変でしたが、優秀な営業マンが頑張ってくれました」と話すウェルネストホーム代表取締役社長の芝山さゆりさん

芝山 われわれが提唱する高気密・高断熱の住宅は、建材や工法にこだわり、職人さんたちが手間をかけてつくるので、いわゆるローコスト住宅に比べると建築コストも高いし、工期も長くかかります。家が完成して売上金が入るまでは時間がかかるので、資金面では大変でした。

構造見学会で柱や断熱材を見せた

―― その後はどうやって住宅の受注を伸ばしていったのですか?

芝山 職人さんたちがお客さんを紹介してくれたんです。普通のハウスメーカーは完成後にきれいに整えてから見学会をしますが、われわれは独自の工法で構造体に特徴があるので、完成前に「構造見学会」を企画し、職人さんたちも招待しました。

窓ガラスやドア、壁紙などがない状態で行う構造見学会。「それでも中に入ると室温の違いが体感できます。職人さんを招くと、使っている断熱材の違いや工法をよく分かってもらえます」(写真提供/ウェルネストホーム)
窓ガラスやドア、壁紙などがない状態で行う構造見学会。「それでも中に入ると室温の違いが体感できます。職人さんを招くと、使っている断熱材の違いや工法をよく分かってもらえます」(写真提供/ウェルネストホーム)