新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。今回は、「エアコン1台で暮らせる」という高気密・高断熱の家づくりで注目されるWELLNEST HOME(ウェルネストホーム)の代表取締役社長、芝山さゆりさん。専業主婦だった芝山さんは36歳で起業。その後、家づくりに打ち込んできた早田宏徳さんに出会い、2012年に住宅メーカーを設立しました。家づくりとは関係のない仕事をしていた芝山さんが、どうして住宅業界に関わるようになったのか。ウェルネストホーム創業までの軌跡を聞きました。

(上)専業主婦から36歳で起業 会社の危機で絆が深まった ←今回はココ
(下)新興住宅メーカーが10年で年商50億に成長した理由

子どもの夢をかなえてあげたいと仕事を始めた

―― 専業主婦だった芝山さんが仕事を始めたのは、どういうきっかけでしたか?

芝山さゆり 結婚前は小学校で音楽教師をしていたのですが、20代で退職して2人の娘の子育てに専念していました。でも、長女が3歳のとき、「私、痛くない歯医者さんになりたい」と言って勉強に興味を持つようになった。これからお金もかかるし、子どもの夢をかなえてあげられる親でいたいと思ったのが仕事を始めたきっかけです。

 週末は夫の会社でイベントなどを手伝っていましたが、その様子を見た夫の知人から「この人に仕事をさせないのはもったいない」と見込まれて、携帯電話代理店の仕事を紹介されたんです。私はもともと人と話すのが好きだし、接客も嫌ではない。「それなら子育ての空き時間にできる」と引き受けました。それが2002年ごろだったと思います。

「社名の『ウェルネストホーム』は『ウェル(良い)』『ネスト(巣)』『ウエルネス(健康)』を掛け合わせた造語。省エネで長持ちするだけでなく、健康であり続けられる家という思いを込めました」と話すウェルネストホーム代表取締役社長の芝山さゆりさん
「社名の『ウェルネストホーム』は『ウェル(良い)』『ネスト(巣)』『ウエルネス(健康)』を掛け合わせた造語。省エネで長持ちするだけでなく、健康であり続けられる家という思いを込めました」と話すウェルネストホーム代表取締役社長の芝山さゆりさん

―― ちょうど携帯電話の普及が進んだ時代でしたね。

芝山 物を売るのは苦手ですが、新しいサービスを紹介する仕事は好きでした。何よりも、携帯を持った人はみんな喜んでくれた。人から喜ばれる仕事って楽しいなと感じたから続けられました。そして、携帯の使い方や便利さを伝えるプレゼンはめっちゃ得意だったと思います。最初はまるで興味がない人でも私が20分くらい説明すると、みんな「へ~、便利だね」と身を乗り出して聞いてくれました。

 iモードやQRコードなど、今までなかった新しいサービスも始まり、「これから携帯は1人1台の時代になるんだな」と。当時周りが夢中だった韓国ドラマよりも、世の中で起きている変化のほうが面白いなと感じていたんだと思います。

―― ビジネスの感覚があったんですね。

芝山 今まで世の中になかった新しいことを分かってもらうには、形式ばった説明より、使う立場になって伝えることが大事ですよね。その頃から、世の中にありそうでなかったこと、そして人に喜ばれることは何だろう、と考えるようになりました。あと、よく言われたのが、「人にものを頼むのがうまいね」です(笑)。それは自然にやっていました。

―― 自分の会社をつくるきっかけはどんなことでしたか?