新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。今回は、シングルマザーで3人の子どもを育てながら、学生服リユースショップ「さくらや」を起業した馬場加奈子さん。子育てしやすい短時間営業と地域貢献型ビジネスで、全国100店超に拡大していきました。地元・高松から東京に進出し、企業や店舗に学生服の回収ボックスを設置するなど、さまざまなプロジェクトを推進。コロナ禍で苦戦しながらの取り組みを聞きました。

(上)「制服が高い」シングルマザーが起業 時短営業を貫いた
(下)高松で起業し全国100店超 大企業とコラボまでの苦労 ←今回はココ

東京に進出するもコロナ禍で人に会えない

編集部(以下、略) 今は東京に拠点を移し、高松と行き来しながら企業とのプロジェクトも進めていますね。高松で起業した馬場さんが、東京に拠点を移そうと思ったのはなぜですか?

馬場加奈子さん(以下、馬場) 地方でできることには限界がある気がして、東京に行かねばと2017年ごろから考えていました。少しずつパートナー店が増える中で、みんな研修には飛行機を乗り継いで香川県に来ていたんです。それは大変なことですよね。飛行機の路線図を見ると、東京集中ですから。

 それに、会社が成長するには、多くの人と出会うことが大事だと思いました。私は学生時代、ずっと陸上競技をしていたので分かりますが、自分の能力をさらに引き出すのには、よい指導者に出会うことが必要です。会社の成長も同じだと。BtoCの発信はSNSでもできますが、BtoBで拡大するためには東京にいて直接会ったほうが話が進みやすい。東京に何かあるから行くのではなく、東京に行けば何かできる、と。それで子どもたちの成長や進学に合わせ、2年前に東京に拠点を移しました。

―― 新型コロナの感染が拡大し、東京での活動に影響はありましたか?

馬場 営業に行っても人に会えないので、すごく苦労しましたね。少しでも外の人と出会いたいと思って、表参道でビルの前を借りて出張買い取りをしたり、下北沢で店舗の時間借りをしたり。そこに人がすごく集まるわけではないけれども、活動していることが大事だと思って発信を続けてきました。東京に来て良かったのは、取材が増えたことですね。とにかく活動を続けていると誰かが目に留めてくれる。

開店したばかりのさくらや渋谷店はモデルルームのような活動拠点。地元・香川県の産品も置いている。営業は月・火曜の11時~16時
開店したばかりのさくらや渋谷店はモデルルームのような活動拠点。地元・香川県の産品も置いている。営業は月・火曜の11時~16時

古い学生服の回収ボックスを企業に設置

馬場 東京に来たばかりのときは、知り合いもいませんでしたが、講演会やメディアの取材を通じて、少しずつ企業から声がかかるようになりました。最初に手伝ってくれたのが東急不動産ホールディングスです。「学生服を買えない家庭がある、買い替えてもらえない子どももいる」という話をすると、着なくなった学生服を回収するボックスを社内に設置させてもらえるようになりました。回収ボックスを目にしたことが子どもの貧困を考えるきっかけになったと若い社員の方に言われましたね。

―― その後、回収ボックスの設置はどうやって広めていきましたか?