新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。今回は、シングルマザーとして働きながら、学生服リユースショップ「さくらや」を創業したサンクラッドの代表取締役、馬場加奈子さん。周囲に反対されながらも「短時間営業」を貫き、地域に貢献するビジネススタイルで、コツコツと事業を成長させました。馬場さんに起業のきっかけと軌道に乗せるまでの道のりを聞きました。

(上)「制服が高い」シングルマザーが起業 時短営業を貫いた ←今回はココ
(下)高松で起業し全国100店超 大企業とコラボまでの苦労

 3人の子どもを育てながら保険外交員として働いていた馬場加奈子さんは2011年、地元・高松市で学生服のリユースショップ「さくらや」を開業。週4日の営業で、子どもが帰宅する午後3時に閉店するというスタイルは、子どもと一緒に過ごしたいという馬場さんの思いから生まれたものだった。

大型リサイクルショップでも扱えなかった学生服

編集部(以下、略) いらなくなった制服を買い取って必要としている人に安価で売るというアイデアは馬場さんご自身の体験から生まれたものですか。

馬場加奈子さん(以下、馬場) 当時、シングルマザーとして働きながら、3人の子どもを育てていました。子どもが成長すると制服がきつくなるから、買い替えなければいけないのですが、新しい制服を買うのは家計に大きな負担です。少しでも安く買おうと、大型リサイクルショップを回ってみたけど、どこにも売っていない。

 会社の同僚に相談すると、「仕事をしていてママ友と交流がないからお下がりをもらえない」「譲ってもらってもお礼をどうするか気を使う」と、みんな同じことで悩んでいました。これは私だけの悩みじゃないと知ったことが、さくらやを始めたきっかけです。長女に知的障害があったので、時間に融通がきくように働きたいと、起業を考えてお金をためていました。その貯金300万円を元手に店を始めたんです。

―― 学校ごとに違う学生服は大きなリサイクルチェーンでも扱いづらい商品だったんですね。店を立ち上げたとき、周りの反応はどうでしたか?

馬場 周りには「学生服のリユース」という業態がなかなか理解してもらえず、むしろ怪しい商売だと思われて、中古の学生服を集めるのに苦労しました。「学生服買い取ります」と書いたチラシを子どもと一緒にポスティングしながら、半年間でやっと50着ほど買い集めて開店にこぎつけました。

「同じように制服で困っているお母さんの役に立ちたい」と学生服のリユースショップ「さくらや」を立ち上げたサンクラッド、代表取締役の馬場加奈子さん
「同じように制服で困っているお母さんの役に立ちたい」と学生服のリユースショップ「さくらや」を立ち上げたサンクラッド、代表取締役の馬場加奈子さん

馬場 学生服のリユースといっても、最初は値ごろ感も分からない。お母さんたちに、「どうしたら買いやすいか」「いくらなら買うか」と100人ぐらいヒアリングして回りました。そうやって話していると、私や店のことも知ってもらえる。値付けや査定金額が定まるまでに3年ぐらいかかりましたね。

 広告を出すお金もないので、ブログ教室に通い、店のブログを書いて毎日10回ぐらいアップしたんです。そうすると地元メディアの人が「面白い店がある」と見つけて取材に来てくれて。地方紙やニュースなどに取り上げられるとお客さんが増えていきました。いまだに広告は出したことがないので、それでどうやって全国展開しているのかと不思議がられます。

―― 立ち上げたときから週4日だけ、子どもが帰宅する午後3時までの短時間営業だったそうですね。