ネットビジネスを広げるカギとなるのは?

村本 サービスが受け入られ始めると、投資家からも目を向けられた。テック企業は面白いと言われやすいですが、テックを使って行う事業は未知のものだから評価されない。このサービスのメインターゲットは女性ですが、VCは男性がほとんどなので、「貸し借りなんて面倒なことやらないでしょ。僕だったら買うね」とまず言われる。そういう中に女性が1人でもいると、「このサービスがあったら使いたい」と言ってもらえました。サービスが形になるまでは、なかなか理解が得られないという苦労はついて回りましたね。

―― 同じサブスクやレンタルでも、自分たちが商品を用意するのではなく、個人から商品を集めて貸し出すサービスにしたのはなぜですか?

村本 私が最初にインターネットビジネスに関わったのは90年代でしたが、当時オンラインのコミュニティーには100万人くらいが集まっていて、そこでの個人のやりとりを見てきました。今のビジネスの中で、個人の力はすごく大きい。自分たちが物を買って貸すシステムだと品物の幅が決まってしまうけれど、個人の力を生かすと思いもしないものが貸し出され、その広がりがすごく大きいんです。

 だから最初からCtoCで考えて、途中からBtoCにも広げていきました。サービスを始めてから気が付いたのは、ユーザーから見れば、企業が提供する商品でも個人が提供する商品でも「いい商品」なら借りる。だから提供する側も限定してはいけないと思ってハイブリッド型にしました。

レンタルした商品はロゴ入りの箱で届く。「届いたときに茶色い段ボールより、こういう箱のほうがワクワクしますよね」(村本さん)。リユースできるプラスチックボックスも開発した
レンタルした商品はロゴ入りの箱で届く。「届いたときに茶色い段ボールより、こういう箱のほうがワクワクしますよね」(村本さん)。リユースできるプラスチックボックスも開発した

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取材・文/竹下順子(日経xwoman ARIA) 写真/洞澤佐智子 

村本理恵子
ピーステックラボ代表取締役
むらもと・りえこ/1979年東京大学卒業後、時事通信社で世論調査・市場調査分析に従事。専修大学経営学部教授を経て98年、ガーラの代表取締役会長に就任、2001年ナスダックジャパン上場に貢献。ウーマン・オブ・ザ・イヤー ネット部門を受賞。09年エイベックス通信放送に入社し、モバイル動画配信事業「BeeTV」の立ち上げに参画。14年、エイベックス・デジタル取締役としてデジタル事業を推進。17年、ピーステックラボを起業しモノの貸し借りサービス「アリススタイル」を開始。21年、ウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞