「老後の道楽でしょ?」と辛らつな言葉も

村本 VC(ベンチャーキャピタル)の方に会って話しても、なかなか事業内容が理解されませんでした。当時、100人くらいに会ったと思います。こういうビジネスを考えていて、将来こうしたい、だから出資してくれませんかと話した。そういう意味では企業の中で一定の地位で仕事をしていた立場から、ベンチャーだから出資してくださいというときの落差はすごかったですよ。「もっとベンチャーっぽい恰好したほうがいいですよ」とか、「老後の道楽なんじゃないの?」と辛らつなことを言う人もいた。なんてこと言うんだと思いましたよ。こっちは真剣なのに。

 それでもしつこく、「このビジネスは絶対いける」と思って話していると、必ず理解者が出てくる。100人に会えば、そのうち2人くらいは理解してくれます。今から考えると当時の企画書なんてすごく薄くて浅いものでしたが、一生懸命説明すると、理解を示してくれる人になんとか出会えます。

―― その理解者はどこに共感してくれたんですか?

村本 ビジネスもそうですけど、私に共感してくれたんだと思います。「村本なら信用しよう」と言ってくれた。だからベンチャーって、人なんだなと思いましたよね。紙に書いたビジネスモデルを持っていってもどうなるかは分からない。それより私に対して投資するという考え方。私の情熱や経験に対してお金を出してくれた。

 最初は紙の企画書だけ、次に少し集まったお金でプロトタイプをつくり、さらに資金を集めてなんとかサービスをローンチする。サービスが走り始めないと資金は集まらない。それは確かです。日本のベンチャーの資金調達環境は、アメリカとはずいぶん違う。だから起業をしてからサービスを開始するまでの2年間は本当に大変でしたね。