新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。夜空に人工流れ星を生み出すという世界初のプロジェクトに挑み、30代でベンチャー企業ALEを立ち上げた岡島礼奈さん。打ち上げ花火のように、好きなときに、好きな場所で流れ星を見せるという壮大な事業。東京大学で天文学を研究していた岡島さんが自ら起業した理由とは? 「お金にならない」といわれる天文学をエンターテインメントに変える新ビジネスはどうやって生まれたのでしょうか。

(上)「流れ星を作る」誰もやったことがない新事業への挑戦 ←今回はココ
(下)たった1人で始めた流れ星事業 強い思いが突破口を作る 

「できるかも」を実現させる力

―― 岡島さんが手がけるのは、小型の人工衛星を打ち上げて軌道に乗せ、金属製の粒を放出して人工の流れ星を作るというプロジェクトですよね。そもそも「人工流れ星」というアイデアを考えたきっかけは何だったのですか?

岡島礼奈さん(以下、敬称略) 人工流れ星のアイデアを思いついたのは大学時代に「しし座流星群」を見たのがきっかけです。実は宇宙工学や天文学の研究者の10人に1人ぐらいは「流れ星は人工的に作れるんじゃないか」と思いつくみたいです。でも、普通は「原理的にはできるかもしれないけど、実現させるのは難しい」で終わる話なんです。

―― 宇宙を研究している人にとっては、それほど「奇想天外」ではないんですね。でも、実現が難しそうなプロジェクトをあえて自ら起業した理由はどこにあったのでしょうか?

岡島 私が会社を立ち上げたモチベーションは、ただ「流れ星がキレイだから打ち上げてみたい」ということではなく、新しい方法で科学を発展させられないかと考えたからです。その手段として、人工流れ星ならたくさんの人の目にとまる。科学に興味を持つ人が増え、科学の知識を使って発展させることにつながります。エンターテインメントにするだけでなく、人工衛星から放出する流れ星の粒を使って大気圏のデータを取得し、基礎科学に貢献できると思っています。

ALE代表取締役社長/CEOの岡島礼奈さん。オフィスに飾られている人工衛星の模型は実物大。すでに2機の人工衛星打ち上げに成功し、周回軌道に入った。2023年までに3号機を打ち上げ、人工流れ星実現を目指す
ALE代表取締役社長/CEOの岡島礼奈さん。オフィスに飾られている人工衛星の模型は実物大。すでに2機の人工衛星打ち上げに成功し、周回軌道に入った。2023年までに3号機を打ち上げ、人工流れ星実現を目指す

―― 大学時代から事業のアイデアを温めていたんですね。

岡島 よく「天文学って役に立たないよね」って言われるんですけど、もともと天文学は暦とか時間を測るために発展してきました。基礎科学ですから、本来は人間の生活をドラスチックに変えていく力がある。アインシュタインの相対性理論がなければGPSや自動運転はできませんでしたからね。天文学は人間の生活にイノベーションを起こしている。基礎科学の研究って本当は人間の生活に役立てることができるし、大事なことなんです