「今、転職や起業を考えている」というARIA世代は、38%(編集部調べ※)に上ります。安定も、それなりの地位もあるのに新しい一歩を踏み出す人は、何が決め手で起業の道を選んだのか――。ARIA世代の起業家が包み隠さず語ります。土屋清美さんは応用物理を専攻したバリバリのリケジョ。システム会社で金融に出合い、金融ベンチャーを経て、金融とITを融合させたフィンテックの分野で起業します。このキャリアを選んだ思いや、起業して直面した最大の危機をどう乗り越えたかについて聞きます。

(上)フィンテック分野で一躍注目の起業家 ←今回はココ
(下)創業後10年、無借金経営を貫いたワケ

本当にやりたいことを追ったら起業に至った

 土屋清美さんは理系のバックグラウンドを生かしてITや金融の知識を現場で積み上げて、10年間に2社を創業。2017年12月、世界初の「株価連動型」のポイント運用サービス「StockPoint」の提供を開始し、フィンテック分野の起業家として一躍注目を集めています。このサービスは、買い物などでためたおなじみの「ポイント」をスマホアプリで運用することで、自己資金ゼロから投資を始められるというもの。運用したポイントは、提携先のポイントや株式に交換できます。資産形成に興味はあるものの、最初の一歩を踏み出せないという一般の人に向けて、「より気軽に投資を経験して、誰にとっても必要な“お金”について考えてもらいたいとの思いでこの事業を立ち上げた」といいます。

 土屋さんは大学卒業後、大手メーカーの研究者を経て、システム会社で金融業界向けの営業系SEとして勤務。その後、創業間もない金融ベンチャー企業、クォンツ・リサーチに参加した後、自身で2006年にSound-FinTechを起業、さらに2016年にポイント運用サービスを提供するSTOCK POINTを起業しました。

 バリバリのリケジョである土屋さんは、極めて計画的、合理的にキャリアを形成してきたのでしょうか?

Q 20代のころから起業を考えていた?

―― システム会社で金融工学を学び、人脈も作った後、創業間もないベンチャー企業に参加。そこで企業の立ち上げから会社運営の一連の流れを経験した後、自身で起業――。このようなキャリアパスから、土屋さんは必要なステップを踏みつつ計画的に起業したように見えます。かなり早い時点で「いずれは起業を」と考えていたのでしょうか?

土屋清美さん(以下、敬称略) 実は全く考えていませんでした。私はそんな先の「夢」は描きません。その時々にやりたいことを素直に実現しようとしたら、たまたまこのような形になりました。基本的に、自分で「こうだ」と思うと、すぐに行動に移すタイプなんです。その端的な例が、新卒で就職した会社を1年で辞めたことですね。

STOCK POINT創業者の土屋清美さん。オフィスの壁が黄色いのは「金融では黄色が縁起の良い色だと言われているから」
STOCK POINT創業者の土屋清美さん。オフィスの壁が黄色いのは「金融では黄色が縁起の良い色だと言われているから」