安定も、確かな居場所もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家に話を聞くこの連載。今回登場するのは学び舎mom代表取締役の矢上清乃さん。愛知を拠点に約6000人のママのコミュニティを擁し、女性の再就職や起業、学びを支援する事業やマーケティング事業を展開しています。育休中に地域のママ仲間に助けられたという矢上さんに、起業までの道のりと新たな事業への思いを聞きました。

 日本IBMでマーケティング業務に従事していた矢上さんは長男の育休中につくったママコミュニティをベースに親子支援のNPO団体を立ち上げました。その後、40歳で退職し、託児付きコミュニティスペース「学び舎 mom」事業で株式会社を創業。

不妊治療の末に妊娠するも産休3日後に切迫早産

―― 30歳でMBAを取得するために米国に留学、帰国後は日本IBMでキャリアを構築してきた矢上さんが、地元名古屋でママサークルを主宰するようになったのは、どういう経緯からですか?

矢上清乃さん(以下、矢上) 30代は私が東京、夫は名古屋と離れて仕事をしていましたが、35歳のとき名古屋への転勤がかないました。すぐ不妊治療を始めましたが、なかなかうまくいかず、諦めかけたとき38歳で妊娠。ところが産休3日目に破水して切迫早産で入院してしまったため、出産準備もままならず、産後うつ状態になっていました。

愛知を拠点に女性の就労を支援する学び舎mom代表取締役の矢上清乃さん
愛知を拠点に女性の就労を支援する学び舎mom代表取締役の矢上清乃さん

矢上 育児疲れでどん底にいたとき、恐る恐る地域のママサロンに出かけたら、ママたちがすごく優しく声をかけてくれたんです。自分は働いている期間が長かったし、出産も遅かったので、どこか専業主婦で幸せそうな人に対して偏見があったのですが、いざ飛び込んでみると、みんな親切で優しい。その交流に助けられて産後うつ状態からV字回復できました。

 復職して地域のサロンを卒業してからも、この付き合いを続けたいと思い、親子サークルを立ち上げました。名古屋市の外郭団体から補助金を受け、親子支援団体「ママスタート・クラブ」として、ホームページを作ったり、イベントをしたり。参加者はどんどん増えていきました。

―― 矢上さんが代表になり、復職後も活動していたんですね。仕事を辞めてNPO活動に専念したのはどういうきっかけですか?