会社を辞めていろいろな人に話を聞いてみた

―― 会社を辞めてからはどのように過ごしていましたか?

小嶋 会社を辞めた後、2カ月くらいは何もしない時期がありました。ハローワークで自分にできる仕事を閲覧したり、声をかけてくれたエージェントと面談したり。なるべく多くの話を聞きたい、聞いてもらいたいと思い、年代も仕事も言語も違うさまざまな人に会う機会をつくりました。

 そうして話をするうちに、会社に勤めるよりは独立してやれることをやっていったほうがいいと考えるようになりました。そう決めてから会社を起ち上げるまでは約1カ月。初めての起業ですが、ビジネススクールや起業塾などに通う時間はなかったので、独学で調べながら事業戦略を書いたり、定款をつくったり、すべて自分でやりました。

―― すごい行動力ですね。起業の準備でご苦労されることはありましたか?

小嶋 会社の規模感は全然違いますが、戦略を考えるのは慣れていたので、会社員時代の経験を応用し、まずは教科書通りにつくりました。足りないところは走りながら考えていけばいいと思った。起業してから1年かけてスタッフを集め、ターゲットとなるクライアントを見つけていくような戦略を最初に立てました。向こう3年間の目標値を設定し、プロセスをつくって実行する。自分で地図を描くことは会社員時代の経験で身についていました。

Q 起業する際に会社のビジョンとして定めた内容は?
Q 起業する際に会社のビジョンとして定めた内容は?
A「ひとりじめしない」が会社のビジョンですが、これは起業する前に決めた私の仕事に対する世界観でもあり、一番、伝えたいこと。最初は「人と仕事を分け合う」「できることを提供する」と考えていたんですけど、どれも言葉がしっくりしなくて。自分が得たものを「ひとりじめしない」ことで、幸せな人を増やすことができると思っています。

―― 事業のもとになるコンセプトはどう考えましたか?

小嶋 会社を辞めようと考える前に、会社の中でも「自分をシェアする」ということを考えていました。だから事業をするときも、何をシェアすればいいのか、どこまでシェアすればいいのか、お金をもらわずにシェアするっていうホスピタリティーの塊みたいなことでいいのかと考えました。

 続けていくには、シェアすることの対価をもらってやりとりするほうがいい。それでいて、資本主義の拡大志向や利益の追求に染まらないためには、「全部を取り切らないことだ」と。ある程度キャパシティーを大きくしながら、ひとりじめしないで分け合うことを考えるとスッキリする。「社会を変える」までは考えていませんが、少なくとも自分と関係がある仲間と共有したい考え方ですね。

 ※起業してからのストーリーは「(下)起業して改めて自分の価値と可能性に気づくことができた」に続きます

取材・文/竹下順子(日経ARIA編集部) 写真/鈴木愛子

小嶋美代子
こじま・みよこ/1989年、大手IT企業にコンピュータエンジニアとして入社。金融機関向けシステム開発に従事。先端技術教育や大規模システム導入教育などのプロジェクトリーダーを務めた後、企業の合併に際してブランド構築と社内浸透をけん引。ダイバーシテイ推進の専任部門で女性活躍推進を中心とした活躍で厚生労働省、経済産業省などから表彰、認定を受けた。2017年、退社して起業。特定非営利活動法人GEWEL代表理事。経営倫理実践研究センターフェロー。芝浦工業大学講師。