安定も、確かな地位もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。外資系企業を中心に華麗な転職経験をもち、管理職を務めていた今西由加さんは43歳で起業。留学生をシッターや家庭教師として紹介する「chezmo family (シェズモファミリー)」を中心に順調に事業を拡大していった。ところが起業3年目に乳がんに。無事に回復した後、新たに始めたことと、その思いとは?

(上)43歳 外資系企業管理職を辞めママ友と2人ゼロから起業
(下)乳がんを乗り越え 起業家・プロボノ・大学院生の3役へ ←今回はココ

事業を拡大するにはどうしたらいいのか?

―― 起業してからはどうやってユーザーを伸ばしていますか?

今西由加さん(以下、敬称略) 広告費を使ったことはありません。ワーキングマザーのSNSにアプローチしたり、ユーザーが紹介してくれたり、サービスが記事で取り上げられたりするおかげで、問い合わせをいただく件数は伸びています。日経DUAⅬに紹介していただいたときは5分間に1回ぐらい問い合わせがあって驚いたのですが、一気に照会があるとシッターや家庭教師として紹介する留学生が足りなくなってしまう。需要と供給のバランスがすごく難しいですね。

―― 起業してから事業内容に変化はありますか?

今西 最初は小さな子ども向けのシッターサービスを考えていましたが、ユーザーの要望を聞く中で内容も広がっていきました。例えばインターナショナルスクールに通っている中学生のお子さん向けに英語で数学や化学を教えてほしいとか、医師の方が医学部の留学生から専門的な英語を学びたいとか。当初は予想しなかったニーズがありました。

キュリオジャパン代表取締役の今西由加さん。英語ネーティブの留学生にこだわらないのも今西さんの「こだわり」。英語学習のステップに寄り添える良さと多様性を大切にしている
キュリオジャパン代表取締役の今西由加さん。英語ネーティブの留学生にこだわらないのも今西さんの「こだわり」。英語学習のステップに寄り添える良さと多様性を大切にしている

―― 事業を拡大することについての難しさはありますか?

今西 シッターや家庭教師を紹介する事業なので大手家庭教師派遣会社と同じビジネスモデル。もっと拡大できる可能性はあるとは思います。ただ、研究のために自分で大手の家庭教師派遣会社に登録してみたことがありますが、規模を広げるとどうしても「薄くなる」というか、満足度の高いマッチングができにくくなるのを感じました。甘いといわれるかもしれないけど、ただ量をこなすことは私の目指す理想とは違う。それを自分でやる意味があるのかなと。だからシェズモファミリーに関しては関東限定で上限を決めてやっていこうと考えています。