安定も、確かな地位もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。ソニー・ミュージックエンタテインメント、クラランス、韓国ロッテ、トリンプ・インターナショナル・ジャパンと華麗な転職経験を持ち、外資系企業で管理職を務めていた今西由加さんが会社を辞め、ママ友と2人で起業したのは43歳のとき。「世界に羽ばたく人材を育てたい」という思いからキュリオジャパンを立ち上げ、留学生をベビーシッターや家庭教師として紹介するサービス「chezmo family(シェズモファミリー)」をスタートさせた。広告費0円にもかかわらず、ワーキングマザーのSNSやクチコミで評判を呼び、リピーターが急増。会社に勤めながら準備したという起業の道のりには何があったのか?

(上)43歳 外資系企業管理職を辞めママ友と2人ゼロから起業 ←今回はココ
(下)乳がんを乗り越え 起業家・プロボノ・大学院生の3役へ

「使える人材になる」ため転職はあえて異業種へ

―― 誰もが知るような大企業から3度の転職を経験され、キャリアとしては年収や仕事の内容など選べる状況だったと思いますが、独立してゼロから起業しようと考えたきっかけは何だったのですか?

今西由加さん(以下、敬称略) 最初から起業を考えていたわけではないんですが、クラランスでPRコミュニケーションマネージャーをしていたとき、次のステップは社内調整や本社とのやり取り、予算管理をする「マーケティングマネージャー」でした。「自分はそれに興味があるのか」と考えてみたら、「もっと現場に近い仕事がしたい」と気づいたんです。次のステップに興味がないなら新しいことをやる方がいい。次に転職した韓国ロッテの日本支社はゼロから立ち上げるベンチャーでした。たぶん「新しいことに挑戦できる」っていうのが私の行動のモチベーションなんですね。

―― 最初の転職も音楽業界から化粧品業界という全然違う業種でしたね。普通は同じ音楽業界で転職を考えますよね?

今西 確かに同じ音楽業界の中で転職を繰り返す人が多いですね。でも、子どもを持つのに音楽業界はワークライフバランスがあまり良くないし、同じ業界しか知らないのは年を取ったときに厳しいなと思いました。音楽業界でもマーケティングを担当していたので、モノが変わっても手法や経験は生かせる。いろいろな業界でマーケティングを学んだ方が「使える人材になれる」と考えて、新しい業界に飛び込みました。

キュリオジャパン代表取締役の今西由加さん。業界の慣習に捉われずショップチャンネルに販路を開拓するなど、外資系化粧品会社でマーケティングの手腕を発揮。「化粧品業界では異端でしたね(笑)」
キュリオジャパン代表取締役の今西由加さん。業界の慣習に捉われずショップチャンネルに販路を開拓するなど、外資系化粧品会社でマーケティングの手腕を発揮。「化粧品業界では異端でしたね(笑)」