加藤史子さん(以下、敬称略) リクルートは起業や転職をする人が多い会社として有名で、社内にも組織の新陳代謝を促す仕組みがあり、定年まで勤め上げる人はわずかです。それでも私はリクルートが大好きで、ずっと会社員のままでもいいと思っていました。

 しかし、観光で地方を活性化する事業を手掛けるうちに、外資に押され気味な日本の観光事業者や地域の観光資源を正しいポジションに戻したい、そのために、個人の旅行者とは単体で出会いにくい観光事業者を後押しする仕組みをビジネスにしたい、と思うようになりました。そうした新規事業を会社で行うことも考えましたが、会社にいたままでは実現できないと分かったのです。

―― なぜ、やりたい事業は起業しないと実現できなかったのでしょうか?

加藤 一番は、経営資源の調達問題です。一般的には「ヒト・モノ・カネ」と言われますが、WAmazingはITサービス業なので主には「ヒト・カネ」です。カネの面で言うと、WAmazingが実現したいビジョンや事業スキームを考えると、当面の予算としても「10億円」程度は必要になるなという感覚がありました。しかも、プラットフォームサービスというのは金食い虫で10億円は1回限りでは終わらないのです。大企業というのは資金力豊富ですが、同時に、複数の事業を行っているので、観光事業のみに資金配分されるわけではありません。当時の状況にて社内で10億円の決裁を取ることは難しいと思われました。

Q 起業しないと得られないと考えたものは?

加藤 事業を動かすための優秀な人材の確保も、社内では難しかった。会社が経営リソースの最適配分を考えたとき、海のものとも山のものとも分からない新規事業にではなく、確実に利益が見込める既存の大型事業に人材を配置するからです。

 一方、社外に目を向けると、そこはスタートアップブームとも言える状況が起こりつつありました。独立系ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルなど、事業規模を拡大するための資金を持つ投資家がたくさんいて、そこから十分な「カネ」を得られる可能性がある。もちろん、起業すれば「ヒト」も自由に採用できます。だったら、その可能性に賭けてみたい、と思いました。

Q起業を検討した時に、「起業すれば得られる」と考えたものは?
「起業を考えた2017年ごろ、スタートアップに流れ込む資金の量は増えつつありました」