安定も、確かな居場所もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家にお話を聞くこの連載。「悩みを解決するビジネスがしたい」とパーソナルスタイリングサービスをローンチしたモデラートの代表取締役、市原明日香さん。アプリで始めたサービスを、ファッション誌でも扱われる人気ブランドに成長させた道筋を聞きました。

(上)息子の白血病でキャリアを断念 そこから開けた新たな道
(下)「服選び」で起業 サービスを浸透させたのは意外な一手 ←今回はココ

―― 長男の闘病生活を経て、自分で会社をつくろうと思ったとき、どういう事業にしたいと考えていましたか?

市原 起業するなら、誰かの悩みを解決するような事業をしたいと考えました。子どもに聞かれたときも「世の中をちょっと良くするために頑張っているんだよ」と言えることがしたいなと、いくつかの事業プランの中から、忙しい女性に向けて服選びの悩みを解決するアプリをつくろうと思いました。衣食住の一つですから、事業としてもインパクトはあるなと。

プロのスタイリストがカウンセリングをしながらコーディネートを提案する「SOÉJU personal(ソージュパーソナル)」を展開するモデラート代表取締役の市原明日香さん
プロのスタイリストがカウンセリングをしながらコーディネートを提案する「SOÉJU personal(ソージュパーソナル)」を展開するモデラート代表取締役の市原明日香さん

 最初はスマホを見ながら服が選べるように、クローゼットを管理するアプリを作ろうと思ったんです。でも服を管理するだけでは「何を着ればいいか」という悩みは解決しない。それでパーソナルスタイリストとマッチングするサービスを考えました。

ダークスーツばかり着ていたら周りから浮いてしまった

―― 市原さん自身も服選びに悩みを持っていたのですか?

市原 はい。昔からファッションに苦手意識がありましたね。コンサルティング会社で働いていた頃はダークスーツばかり着ていましたし、忙しくて仕事ばかりしていたのでトレンドも分からず、休みの日に何を着ていいか分からなかった。だから、ルイ・ヴィトンに転職したとき、大丈夫かなと心配はありました。

 職場では毎日、皆さんおしゃれな服を着ていて、ジャージーで出勤する個性的な人もいる。ダークスーツを着ていると自分だけ違うカルチャーの人という感じでした。これは変えなくてはと思い、おしゃれな先輩にお願いして、デパートに一緒に行って、洋服を選んでもらったんです。そのとき、なぜその服を選んだのか丁寧に教えてくれました。私が手に取った服がなぜダメなのか、そこにはちゃんと理由がある。

 おしゃれな方は感覚で選んでいるのかと思っていましたが、一定の理論があるんだなと感じました。自分で選ぶと自分の幅でしか選べないけれど、人に選んでもらうことで知識も広がるし、客観視もできる。これは、いいなと思ったんです。

―― その体験がパーソナルスタイリングサービスというビジネスモデルに反映されたんですね。