安定も、確かな収入もあるのに新しい一歩を踏み出したARIA世代の起業家に話を聞くこの連載。日本支社代表として働いていたネクストドックスが買収され、日本支社が閉鎖されたのをきっかけに起業した鎌倉千恵美さん。創業メンバーはフランス人、スウェーデン人、チュニジア人という多国籍な構成でした。しかも、日本とフランスに分かれての起業。それが意外な効果をもたらしました。

(上)日本支社は全員解雇 その衝撃が起業の背中を押した
(下)テレワークを募集条件にしたら優秀な女性人材が集まった ←今回はココ

東京在住2人、フランス在住2人でスタート

―― 立ち上げ当初、鎌倉さん以外のスタッフは全員外国人、日本とフランスに分かれて出発でしたね。コミュニケーションやチームワークはうまくいきましたか?

鎌倉千恵美さん(以下、敬称略) フランスに住むフランス人とチュニジア人、日本に住むスウェーデン人と私の4人で発足したのですが、みんな母国語ではない英語でコミュニケーションしていました。そのおかげで、何でもダイレクトに言い合えた。ニュアンスとか一切伝わらないので、それがかえって良かったと思います。ビジネス自体の目標は分かり合えていたので、とてもスムーズに進みました。開発当初からグローバルに使えるサービスにしようという思いは共通していましたね。

―― 多国籍チームでカルチャーの違いやズレはありましたか?

鎌倉 「外国人は休みを多く取り、日本人は勤勉」みたいなイメージがあると思いますが、意外とどこの国の人も猛烈に働きます(笑)。国籍より個人差ですね。

「日本とフランスに離れて起業することに、お互い何の疑問も持ちませんでした」(アガサ代表取締役、鎌倉千恵美さん)
「日本とフランスに離れて起業することに、お互い何の疑問も持ちませんでした」(アガサ代表取締役、鎌倉千恵美さん)

鎌倉 一緒に起業したフランス人技術者は、前職からの同僚です。そのときもフランスに住みつつ、日本の顧客のサポートをしてくれていました。あるとき、顧客からどうしても12月24日に会議をしたいと言われたのです。フランス人がクリスマスに働くなんて考えられませんよね。でも、彼はOKしてくれた。家からテレビ会議をすると奥さんに怒られるので、夜中に自分の車にWi-Fiを持ち込んで2時間、怒られっぱなしのつらい会議に出てくれたんです。この人なら一緒に起業しても、いろいろなことを乗り越えていけると思いました。

―― 4人で立ち上げた会社も今はスタッフが増えていますよね。人材確保の苦労はありましたか?