―― 今後、チャレンジしたいことはありますか?
禹 社会的な弱者になりやすいマイノリティーな人たちがテクノロジーの恩恵を受けられるようにしたいですね。そうした分野は市場も小さくて収益を生みづらいので、なかなか大手が参入しません。私たちのビジョンは、「誰もが生きやすい社会をつくる」。その実現に向けて、新しいサービスを生み出していきたいです。
蓄積したデータが収益化のカギ
―― まさに痴漢レーダーがそうした発想のサービスですが、今後どうやって収益化していくのですか?
禹 痴漢レーダーでは、正確な位置情報をベースにした被害状況やその詳細が分かります。こうした情報がどんどん集まって蓄積されていけば、安全なインフラ作りに役立つデータベースが出来上がります。それを必要な機関に提供することで収益を得るのが、私たちのビジネスモデルです。
ただし、データとして価値を持つようになるには、ユーザーは最低でも100万人は必要だと思います。さらに1000万人を超えれば、初めてビジネスとして大きな可能性を持つでしょう。今、痴漢レーダーのユーザーは5万3000人で、登録されている被害件数は2000件ほど(2019年12月時点)。まだデータとしては足りないので、どんどん収集し蓄積している段階です。
今のところ運営は、エンジェル投資家から調達した資金で回しています。サイトにウェブ広告を入れれば手っ取り早く収益化できるのでしょうが、広告よりデータに価値を置いて事業を成長させたいと思っています。
―― データの提供先として、どういった機関を想定していますか?
禹 企業や公共機関、また学校にとっても貴重なデータとして活用できると思います。例えば、警察がパトロールするときに、リアルタイムの被害状況が分かれば効率の良い警備体制が敷けるでしょう。ハザードマップも簡単に作れるので、被害の抑止につながると思うんです。
蓄積されたデータを解析していけば、どういう環境で被害が起きやすいかも導き出せるので、犯罪予防にも使えます。街のどこに監視カメラを設置すれば有効かといったインフラ整備にも利用できるので、街づくりに役立つはずです。
例えば、Google マップで移動ルートを検索すると、効率的な道のりを教えてくれますよね。それに私たちのデータが加われば、「安全なルート」という新たな切り口で検索できるようになるかもしれません。そのためにも、まずは2020年の年末までに100万人のユーザー獲得を目指します。