ワーク・ライフ・バランスが声高に叫ばれる現在、一方では仕事そのものを面白がり「遊ぶように働く」人たちも現れています。牧場で馬と一緒に学ぶ企業研修を実施するCOAS代表の小日向素子さん。アートとビジネス研修を融合したプログラムなど、将来構想を広げます。

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38歳で突然退社 元外資系部長が挑む牧場での企業研修


―― 東南アジアから日本に戻り「馬と出合って」から、欧米に馬のプログラムを受けに行ったんですね。企業人向けの馬と研修するプログラムが既に欧米にはかなりあったそうですが、もともと乗馬など馬と触れ合う文化的背景があるからでしょうか。

小日向素子さん(以下、敬称略) もちろんそれもあります。さらには、グローバル企業の幹部として活躍していた人が会社を辞め、自分の所有する牧場でプログラムを提供している例もありました。

「企業組織と違い、新しい牧場の運営はゼロからの出発です」
「企業組織と違い、新しい牧場の運営はゼロからの出発です」

 リーマン・ショックあたりが転機だったかもしれませんが、組織やリーダーシップの考え方が大きく変わってきていますよね。環境の変化が速くなり、多様な人材が組織を構成するようになる。これまでのようにビジネスのスキルが優先で、関係性を築くことが後回しでは、組織は成長していけない。これは誰もが気付いていると思います。

 他者との関係性を築くことの根本にある、生きる力に気づかせてくれる存在が馬だった。馬の力を借りて、企業で働く人や経営者が行動を変える、そうしたプログラムが社会的なニーズになっていくと察知した人が欧米には多かったのだと思います。

 馬と向き合うことで直観的に得られることはたくさんあるのですが、例えば「リーダーシップには多様な形がある」こともその1つです。馬の群れのリーダーは必ずしも体の大きい強い馬とは限らず、群れが置かれたその時々の環境や条件によって変わります。また、馬は言葉を理解しないので、非言語のコミュニケーションによってリーダーシップとフォロワーシップが成立し、多様な馬からなる群れ全体を生き延びさせていく。

 例えば女性リーダー研修では馬の存在を通じて、受講者が自分なりのリーダーシップのスタイルがあることに気付くという大きな意義があります。これは人間相手の研修ではなかなか難しいのではないでしょうか。