並ばずに買える仕組みをいち早く導入

―― 今年7月には、テークアウト専門店「TP TEA(ティーピーティー)」で、スマホを使って注目できるシステム「スマタピ」もスタートしました。

木川 これまで「店に行ったけれど行列で買えなかった」という声を聞くたび、なんとかしなくてはいけないという危機感があったんです。おいしいお茶を全世代の方に届けたいという思いで始めたのに、これではお客様の層が絞られてしまう。忙しいビジネスマンや子連れのお母さんたちにも楽しんでもらう方法はないかと考え、今回、事前ウェブオーダーシステムを導入しました。

 ヒントになったのは、去年の上海旅行です。友人に薦められ、上海で今、スタバを上回る勢いで急伸している「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」というコーヒーショップを訪れたのですが、そのシステムに衝撃を受けました。注文は、スマホのアプリを使って事前にオーダーするのがメイン。店頭でも受け取れるけれど、半分はデリバリーなんです。システム上、店舗も簡素なものでOKなので、同社はわずか1年足らずで何百店舗も出店しています。

 日本人の場合、温かいものは温かいままでというニーズが高いので、こうした事前オーダーシステムが浸透するかは難しいですが、冷たいタピオカティーならマッチする。これはぜひ取り入れるべきシステムだと思ったんです。

カフェでお茶を楽しむ「文化」を根付かせたい

―― この先、どんな展開を描いていますか?

木川 目指しているのは、日本で「カフェで気軽にお茶を楽しむ文化」を根付かせることです。今回、ウェブオーダーのシステムを導入したことで、これまでと違ったお客様にも飲んでいただけると期待しています。いろんなタイプのお店や買い方があり、自分にあった楽しみ方ができる。お客様にとって選択肢が広がることで、お茶を気軽に楽しむ文化を創っていきたいという強い思いがあります。

 台湾はもちろん、すでにシンガポールや香港、アメリカでも、タピオカティーは「バブルティー」「ボバ」という名称で浸透しており、「お茶を買って飲む文化」が定着しているんです。日本でも今後20年くらいで、そうした文化が根付くのではないかと見ています。

 文化というと、何百年もかけないと定着しないと思いがちですが、本当に可能性のあるカテゴリーなら実現可能です。シアトル系コーヒーがわずか20年くらいで新しいコーヒーの文化を作り上げたように、カフェでお茶を飲む文化が広がる可能性は大いにある。それがこの仕事で一番楽しく、醍醐味を感じるところですね。

スタバがシアトル系コーヒーを浸透させたように、カフェでお茶を飲む文化を広げたいと語る木川さん
スタバがシアトル系コーヒーを浸透させたように、カフェでお茶を飲む文化を広げたいと語る木川さん