経営者二人の気楽なトライとして始まったドラマ制作

佐藤 ドラマの企画は、もともとは「北欧、暮らしの道具店」の1分間くらいのWebCMを作ろうという思い付きから動き出しました。制作会社に企画を持っていったら、「オムニバスで短編ドラマを作って、それをつなげたものを、最終的にお客様を集めて劇場で上映イベントをしたら面白いのでは?」と提案され、二人とも乗り気になってしまって(笑)。見積もりは予算の6倍になりましたが、まずは経営者二人の気楽なトライとして一話だけ作ってみようと、15分の短編ドラマを作りました。何か、勘が働くというか、「いい匂い」がしたんですよね。

 そして昨年3月にWeb上で公開してみたら、予想以上に再生数や動画視聴維持率が伸びて、視聴者からも「こういうドラマを待ってました、見たかった!」という反響が300件以上も届いたんです。長年のユーザーからは「ここ最近、お店が変わっていくのを見ていて寂しかったけど、開店当初からの好きなテイストが変わってないと分かってうれしかった」という声も。すぐに続編が決まり、結果的に社員を巻き込むことになりました(笑)。

 気楽に始めたドラマの制作ですが、もちろんビジネスなので、「フィットする暮らし」というメッセージが一貫するように、監督や脚本、プロデューサーと何度も話し合いました。舞台になっているのは私の自宅。登場する器や雑貨は、以前に店で販売していたものも多いです。ユーザーからは「私が持っているモノがドラマに出ている!」と喜ばれています。

 ドラマで初めてフィクションという手段を使ってみたのですが、分かったのは、直接メッセージを投げかけるよりも伝わり方が深い、浸透圧が強いということ。これまでのモノや人という現実を伝える手段とは違う、お客様とコミュニケーションするための新しい手法を得たと感じています。

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取材・文/渡辺満樹子 写真/村田わかな 構成/大屋奈緒子(日経ARIA編集部)